魔王 VS 狂公〜3度目の戦い
302 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 00:33
エーコ「さようなら、ガーネット」
髪を掻きあげて気障っぽく振舞ったエーコは、フレアジャ乱れ撃ちを、
1歩1歩自分を凝視しながら近付いてくるガーネットに放った。
四つの核熱球が、時間差を置いてガーネットにぶつかる。
ガーネット「ぬぅ…」
ガーネットは、その爆発に一瞬怯む。
怯んで出来た隙をついて、エーコは一気に間合いを詰め、ラグナロクを振るった。
その刃先がガーネットの脳天を捉えたか思った瞬間、ガーネットはそれを白刃取りで受け止める。
そして、ガーネットはラグナロクごとエーコを放った。
壁に直撃しそうになったエーコは、壁にサンダガを放って、その衝撃で己の軌道を反らす。
ガーネットはライトブリンガーを抜いて、エーコを一刀両断しようとして、跳躍した。
エーコはラグナロクでそれを弾く。
が、何とか弾くことはできたものの、ラグナロクは一瞬でへし折られた。
折れた剣先が床に転がり、その音が大広間に響く。
ガーネット「フン…。自慢のラグナロクはもう使い物にならんな。
次はどうやって交わすつもりかな」
余裕の笑みを浮かべるガーネット。
エーコ「仕方がない…。この刀を使うか」
そう行ったエーコの手に現れたのは、一本の精巧な細工がされた刀。
ガーネット「塵地螺鈿飾剣か…。相変わらず、凶悪な武器を持っているものだな。
面白い、それでどれだけ私の剣技が防げるか試してやろう」
エーコ「何を言っている、この方なはお前の攻撃を防ぐ為に使うのではない。
貴様を消す為に使うのだ」
エーコがそう言うと、塵地螺鈿飾剣が輝き出した。
塵地螺鈿飾剣から引き出された巨大な火炎がエーコの回りに出現し、対峙したガーネットを焼く。
ガーネット「く…小癪な…。ウォータガ!」
ガーネットは、ウォータガで巨大な水柱を呼び出し、火を消した。
消えた火の中から凄まじい速さで剣を振るうエーコが姿を現す。
エーコ「死ね。超究武神覇斬」
エーコが息もつく間もなく連続で叩きこむ剣撃に、ガーネットの身体は踊らされた。
>>315
次元の狭間
306 名前:266の続き 投稿日:2000/09/05(火) 00:59
(・・・ゼムス・・・・エスタ・・・・・)
ギュウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ――――・・・ン
ふいに視界が暗転してゆく・・・。
周囲の空間全てが暗黒の闇の中へ呑みこまれてゆく。そして―――――――――
気が付けば2人は全てが黒き闇の中・・・・無の世界にいた。
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フライヤ「!!!・・・・・・・・・・・こっここは・・・これは一体・・!?」
(ここは・・知っている・・あの時、コンデヤ・パタで・・
そう・・・・あの時と・・・・・同じ・・空間・・・。)
ゼムス「・・・・ここは次元の狭間ジェイド・・・我等エスタの民が
時空と次元を越えし空間の道・・・。」
気が付けば、エーコの身体を依代として支配したゼムスが眼前にいた。
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フライヤ「・・・・ゼムス・・・・。・・・何者じゃお主は・・・?」
ゼムス「・・・・かつて私はエスタで研究を行う魔道士の1人であった・・・・。」
全てが暗黒の闇に覆われた世界で、ゼムスと名乗る思念霊体はゆっくりと口を開き始めた。
「太陽の力」とは…
307 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 01:02
ゼムス「・・・エスタにて、私を含む魔導研究者達は偉大なる秘法を発明するに至った。
・・それは「太陽の力」そう呼ばれる事となった。
我々が生み出した「太陽の力」・・それは正確には「星」そのものを操る秘法。
「星」の呼吸、「星」の生命、「星」の流れ、・・そして「星」の力。
いわばその全てをコントロール可能とする大いなるエネルギー。
その「力」はそれが在りし星に根付き、その根付きし星にてその「力」を発動させる。
すなわちその「力」が月に在れば月を自在に・・・
太陽に在れば太陽を自在に・・・
そして・・・この星「ガイア」にあれば・・そうガイアも無論、自在に・・・
その「力」はいうまでも無く素晴らしい発明であった。「星」を自在に操る・・
そう、しかもその対象は万物の生命のエネルギー、偉大なる「太陽」でさえも
例外ではなかったのだから・・・。
・・しかし何を狂ったか、他の研究者達はこの素晴らしい発明に、
恐怖と嫌悪を抱き、愚かな事にその「力」そのものを封印、廃棄しようとしたのだ。
何という愚かな真似であろうか・・人がついに辿りついた「神の領域」に等しいそれを・・
愚かなる彼等はその「力」に、ある、プロテクトを施した。
それは、人の体内を、「力」の「封印」の媒体とせし事であった・・。
その・・「力」を封じられた者・・その・・「力」の封印の「器」・・・
・・・いうまでもなくベアトリクス。お前の事だ。」
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ベアトリクス出生の秘密
308 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 01:03
ゼムス「「器」の体内によってプロテクトされたその「力」は、その効力の発動を
ほぼ完全に封じられる。いわば「器」の体内にて眠ったままの状態となる。
当然の事ながら「力」を戻すには「器」よりそれを取り出す事が必要となる。
彼等の企んでいた、「力」の封印、廃棄の計画を知った私は、ベアトリクス・・。
当時、未だ赤子であったお前から「力」の抽出を試みた・・。
・・しかし不運にも事が事前に知れ、私はエスタを追放されたよ・・・・。
かくして彼等は遥かなる時空を越えしこのガイアと呼ばれる星に、「力」の「器」を
封印・・放棄した・・。そしてベアトリクス・・。お前はこの世界にて
失われし封印の「器」としての「偽りの生」をあたえられたのだ・・・。」
フライヤ「!!・・・・・・・・・・!!何と・・・何という・・。」
あまりにもショッキング、あまりにも唐突に知り得る事となった
ベアトリクスの出生・・・・。言葉を失うフライヤ。
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
しかし当のベアトリクスは依然うつろな表情で黙したままだ。
>>343
激震!ガーネット
315 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 01:09
エーコ「やったか…?」
超究武神覇斬を食らって倒れているガーネットを見ながら、
エーコはまた髪を掻き上げて呟いた。
だが、全身から血を滴らせながらも、ガーネットは再び立ちあがる。
ガーネット「…エーコよ。…あの前より随分と成長した様だな。
だが、私は貴様に負けぬ」
ガーネットがそう言うと、ガーネットの身体から波動が迸った。
アサシンたちは、無意識のうちに後ずさりする。
ガーネット「食らえ…。ショックウェーブパルサー」
突如、エーコたちの頭上にフレアを遥かに凌駕する巨大な核熱球が現れた。
そして、エーコとアサシンの身体が持ち上げられ、世界を白一色で塗りつぶす核爆発が起こる。
エーコ「きゃあぁぁーっ!」
城の上部を一瞬で消し飛ばした核爆発に、エーコが甲高い悲鳴を上げた。
アサシンたちは、叫び声をあげる間もなく消し去られる。
やがて、再び世界に色が戻るとエーコは地面に叩きつけられた。
エーコ「がはっ!」
ガーネット「美しい。美しいぞエーコ。悲鳴を上げて、地面に横たわる貴様の姿はな。
フハハハハ…」
屋根がなくなって、陽光が降り注ぐアレクサンドリア大広間にガーネットの笑い声が響く。
ガーネット「さて、次はどのように鳴いてくれるものかな」
ガーネットは、倒れているエーコの背を掴んで持ち上げると、宙に放った。
そして、それにドルフィンブロウを叩きこんで、突き上げる。
ガーネット「…食らえ、夢幻闘舞」
宙を舞っているエーコの回りを、無数のガーネットが囲んで強烈な打撃を加える。
エーコ「あぁぁーっ!」
エーコは、また苦痛の悲鳴を上げる。
それを聞いたガーネットは、口端を歪めて嗤った。
>>365
雲を掴むような…
343 名前:308の続き 投稿日:2000/09/05(火) 05:52
ゼムス「・・・エスタを追放されし私は当然お前がこの世界に送り込まれた事など
知る術はなかった・・。探す手掛かりですら掴む事はかなわなかったはずであった・・が、
私はすぐにその「力」の存在を捕らえる事が出来た・・・何故だかわかるか?」
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ゼムス「・・・私は知らなかった・・いや、忘れていた。そして他の愚かなる研究者共もな。
我等が生み出せし「力」の概念・・それは、
いわば、その「力」とは、星に根付く生命、すなわち星を支配する根幹そのものに
なりえるものであったという事だ。
その我等が忘れていた・・その「力」に在りし・・ある「作用」。
・・・それが当時、私の最も求めてやまないものであったとは・・・
星に根付く生命・・そしてそれが「乱される」時、発動する作用・・・
星の「自浄作用」・・・・・・」
星の「自浄作用」
344 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 05:53
ゼムス「・・星に根付きしこの「力」にとって、この「自浄作用」こそが
「力」の中に在りし操作能力、制御能力以上に、最たる重要な・・そして強力な
エネルギー作用であったのだろう。
そう、思えば、支配せし「星」そのものが死すればその「力」の存在理由も無くなって
しまうのだからな。
・・・反応したよ。堅く「器」の体内にプロテクトされていたにもかかわらず・・・
・・プロテクトされていたが故にその反応は微微たるものではあったが
さすがにこの作用から発せられし力の反応は全て覆いきれるものではなかった。
・・・・・「力」そのものの「危機」であったのだからな・・・・
それは、十分私に伝わり、そして「力」の在処・・そう、「ガイア」の存在を知り得たのだ。
・・さて、何故に突然ガイアに封じられた「力」に、星の危機を感じたる「自浄作用」が
働いたのか・・?・・ククク・・その答えはフライヤ、お前の方が良く知っているのではないか?」
フライヤ「・・・・!!テラによる・・・魂の・・循環・・・!!」
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
ゼムス「ククククク・・そうだ・・その通り。星の魂の乱れ・・魂の循環!
それによってもたらされし「力」の自浄作用の反応!それこそがベアトリクス・・・。
いわゆる、お前の「力の波動」・・・・。そしてそれはお前の存在を知るカギとなる。」
ベアトリクス「!!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
ゼムス「・・・・ククク・・思えば滑稽なる事よな・・。知られざるべき封印の地が
何と自ら封印の在処を示してくれる事になったのだから・・・・。」
ある問題点
345 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 05:55
ゼムス「・・星の乱れ・・魂の循環・・これを私はいわば「探知機」として利用し、更に詳しく
「力」の在処・・そう封印の「器」を探し出す事にした・・・。
さて、・・かくしてガイアに封印の「器」が在りし事は知る事が出来た・・。が、
そこに、「1つの問題点」が浮上した。」
フライヤ&ベアトリクス「?????・・・・・・・・・・・・・」
ゼムス「・・その問題とは、確かにガイアからは「力」の反応があったのだが、肝心の
封印の「器」が、一体何処にいるのか・・?までは、その当時の魂の循環では
なかなか特定はできなかった・・。いわば魂の循環そのものが・・・・「力」の所在をはっきりと
示してくれるほど、強い乱れではなかった・・。いわば、そう、「生ぬるかった」のだ。
更に、何と魂の循環は徐々に弱まっていった・・それと共に「力」の自浄作用の反応も・・
このままでは、この世界にすむ人間を1人1人調べていこうにも、ガイアの中で反応が
消えれば最早探し様がない。ならばどうする・・?そう、それならば
もう1度、己がこの星に魂の循環を引き起こす・・そしてそれは「大規模」にて
更に「早急」に行う必要があった。」
引き起こされた戦乱
346 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/05(火) 05:56
ゼムス「急激な加速で行う魂の循環・・。・・イコールそれは、このガイア全てを巻きこんだ
・・・・・・「大戦乱」!!
・・・・以前、この世界に戦乱をもたらし魂の循環を行ったものがいたな?」
フライヤ「・・・・クジャの・・事か・・・・・・・。」
ゼムス「・・・ふむ・・クジャ といったのか・・。その者はおそらく大いなる力を持った
者であったのだろう・・。以前の魂の循環は「それ」で十分であったのやも知れぬ・・が!
今回の私の行う魂の循環は、ガイアでかつて行われていたような生易しいものでは・・・
・・・・「間に合わない」のだ!! ・・・さて・・それではどうする?
以前のガイアの魂の循環の何倍もの効果をもたらすには・・・・・?」
フライヤ「!!!・・・・それは・・・ッ!!」
ゼムス「・・・簡単な事。そのクジャとかいう者に代る者を複数用意すれば良いだけの事。
・・・・・ククク・・そう・・6〜7人程度程な。・・・・・・これで大体の想像はついたか?
この星の魂の全てを速く・・大きく・・一気に!乱す!!
当時未だこの世界に手出しならざる状況であった私は我が代役として「それ」を
やってもらう者が必要であった。・・それを現時点で行う力を持っていた者達・・
クジャに代わる力を持った者達・・・
・・・・・すなわち、フライヤ・・お前達に働いてもらう必要があったのだよ・・・。」
フライヤ「・・!!それで・・私達に・・Gトランス能力を・・!!!」
反撃のトランス
365 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/06(水) 00:57
夢幻闘舞を食らったエーコは、大広間の床に落ちた。
そして、自分の体内から流れ出した血の海に横たわる。
ガーネット「クックック…。流石の貴様も、本気を出した私には敵わぬようだな。
やはり、私を超越する物は存在しないのか」
ガーネットは、己の力に酔いしれて一人笑みを浮かべる。
エーコは、よろめきながら何とか立ちあがった。
ガーネット「ほう…未だ立ちあがれたのか? 面白い。
しかし、もう少し遊んでやりたいところだが、ジタンの猿やネズミどもも始末せねばならんのでな。
少々心残りだが、ここで蹴りをつけるか」
ガーネットは深く踏み込むと跳躍し、エーコを一刀両断しようとしてライトブリンガーを振り上げた。
エーコは、自ら剣の方に左手をかざし、左手を断たせるとその衝撃で軌道を変化させる。
エーコ「うっ…い…痛い…。痛いわ…。で…でも…、でもこれで使えるはず…」
激痛の為に涙と脂汗を流しているエーコが先の無くなった左手首を抑えながらそう言うと、エーコの身体が輝き始めた。
トランス状態だ。
エーコ「ガーネット…。この勝負…は私の勝ち…だよ。
…お前たちは未だ使えぬ…アルテマを超越した未知の魔法アポカリプス…」
「究極」を越える「破壊」魔法
366 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/06(水) 00:58
ガーネット「アポカリプス…だと?」
ガーネットが訝しげな表情をした瞬間、エーコの手が輝き始め、ガーネットの足下に巨大な魔方陣が現れる。
そして、魔方陣から現れた幾筋もの光がガーネットの頭上でまとまり、巨大な光の矢となってガーネットを射抜く。
ガーネット「ぐわあぁぁーーーっ!」
光の矢に射抜かれたガーネットは信じられないような表情をしながら絶叫を上げ、その場に崩れ落ちた。
足が使い物にならなくなっていたから。
ガーネット「バカな…神すら超越したこの私が、こんな餓鬼風情にっ!」
ガーネットは、穴の開いた脇腹を抑えながらエーコに苦し紛れのフレアを放つ。
それを、エーコはあっさりとかわして、ガーネットを冷ややかに見つめた。
エーコ「ガーネット…。お前は悲鳴が美しいといったが…。
私には単なる耳障りな雑音にしか聞こえないよ…。
…駄目押しにもう一度アポカリプス」
再び、ガーネットの下に魔方陣が現れ、巨大な光の矢がガーネットを射抜く。
ガーネット「そんなバカな…この私が…」
ガーネットの声が聞こえなっていくと同時に、ガーネットの肉体も消えた。
エーコ「フフ…フフフ…。勝った…」
異変〜アレクサドリア城
368 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/06(水) 01:22
ベアトリクス 地下牢
「(おかしい…)」
目を閉じ、壁に寄りかかっていたベアトリクスは、城内の変化を感じ
鉄格子へと歩み寄った。
左右に視線を走らせるが、普段ならばいるはずの見張りの兵士すらいない。
「お姉ちゃん」
ビビの息子も何かを感じたらしく、壁越しに不安げな声を投げかけてくる。
「大丈夫。心配しなくていい」
ビビの息子を安心させるように言って、ベアトリクスは再び目を閉じた。
意識を聴覚に集中する。
微かに聞こえてくるのは大勢の人間の足音、怒声、そして剣戟の打ち鳴らさ
れる甲高い音。
軍人を生業とする自分にとって、それが何を意味するかは考えるまでも
なかった。
城内での戦闘。
アレクサンドリアが何者かの侵攻を受けている。
「考え得る可能性としてジタン、もしくはリンドブルムか」
いずれにしても既に城内に攻め込まれているのだ、アレクサンドリア陥落は
時間の問題だろう。
確かにガーネットは恐ろしい程の力を持っている。「戦闘」でならそう簡単に
負けはしないだろう。だが…兵法を知らぬガーネットに「戦争」で勝てる
見込みなど全くありはしない。
「とにかく、この機にここを脱出しなければ」
呟き、ベアトリクスは鉄格子に向かって意識を集中した。
脱出〜アレクサンドリア城地下牢
369 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/06(水) 01:25
「ホーリー!」
聖なる白爆が鉄格子を歪ませ、完全に破壊する。
「確かこの中に…」
牢を出たベアトリクスは近くに置いてある小さな机の引出しから、鍵の束
を取り出した。
鍵を使い、ビビの息子を牢から出してやる。
「その、ありがとう。また…助けられちゃったね」
ばつが悪そうに床を見ながら礼を言うビビの息子に、ベアトリクスは笑みを
こぼした。
「(小さくても男の子か…)」
そんな事を思いながらビビの息子の肩に手を置く。
「さっ、早く脱出しよう。きっとみんなが心配している」
「うん」
大きな帽子が縦に揺れ、ビビの息子がベアトリクスの顔を見上げた…その時!
「お姉ちゃん、後ろ!」
その声に反射的に振り向くベアトリクス。
そこには今にも剣を振り下ろさんとするアンデッド兵の姿があった。
「レイズ!」
右手を掲げ、魔法を発動させる。
アンデッド兵を光が包み込み、一瞬にして消し去った。
甲高い音ともに鎧や兜、剣が床に落ちる。
静かに息を吐き出し、ベアトリクスは床に落ちた兜を手に取った。
間違いなくアレクサンドリアの正式装備である。
「(なぜアレクサンドリア兵がアンデッドに…)」
アンデッドに襲われた者がアンデッドと化す事はある。だが、自分の知る限り
ジタン側にもリンドブルムにもアンデッドの兵力はなかったはずだ。
だが、幾ら考えたところで答えは出はしなかった。とにかく自分の目で確か
めるしかない。
ベアトリクスは小さく頷き、腰に手をやった。が、いつもならそこにあるはず
の物がない。
「まずはエクスカリバーを取り戻さなくては」
拳を握り、ベアトリクスは地上へと続く階段へと向かった。
「私から離れないように」
ビビの息子に一声かけ、階段を見上げる。
地上からは、微かな腐臭が漂っていた…。
>>369