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白煙の中に蠢くもの

373 名前:クロマ書きの主張 投稿日:2000/09/06(水) 03:12

魔力によって強制的に歪められた空間が自己修復する際に生じる、巨大なエネルギー乱流によって、
レクリエーション施設は完膚なきまで破壊し尽くされていた。その猛威は隔壁をも破壊し、
周囲数ブロックにまで被害が及んでいた。
『…やった。でも…これはやりすぎね…。ジタンの頭痛の種をまたひとつ増やしてしまった…』
レビテトで空中から周囲を見回していたミコトは、未だ白煙が漂う惨状にほんの少し苦笑した。
粉砕された硝子窓から室内に風が吹き込んで来る。その冷たさに身震いし、ジタンに報告したら、
熱いシャワーで煤を洗い落とそうなどと考えた時、ミコトははっとした。
冷風に晴れつつある白煙の中に、蠢く巨大な「もの」がいた。

374 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:14

『今のは…何? はっきりとは見えなかったけど…少なくともさっきの2人ではない…あの連中が
何かを召喚していたのかしら…』
ミコトのアルマゲストによってもたらされた破壊によって、このエリアをカバーする結界発生機構に
被害が及んでいるのはまず間違い無い。召喚が可能になっている可能性は高かった。
ミコトが警戒しつつ身構えた瞬間、白煙の中から凄まじい速さで何かが飛び出してきた。
ティンカーベルが音を立て、宙に舞った。警戒していてもなお回避不可能な、圧倒的速度の体当たりだった。
壁面に叩き付けられる瞬間、レビテトによる重力コントロールで咄嗟にブレーキをかけていなければ、
あるいは即死していたかも知れなかった。
激痛で精神集中が途切れた事でレビテトは効果を失い、ミコトは床に落下した。

ミコトの危機

375 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:15

『左脚…それに右腕が骨折…背骨にもひびが入ってるみたい…内臓諸器官にもかなりのダメージ…
破裂には……破裂にまでは至らなかったみたいだけど…死ぬ…このままだと……死ぬ…確実に…』
意思力を総動員して、今にも暗黒の彼方に飛び去りそうな意識を無理矢理繋ぎ止める。
『嫌だ…死にたくない…まだ……ジタン…』
ミコトはケアルガとリジェネの呪文を立て続けに詠唱した。連続魔と呼ばれる、魔法を連続使用する為の
独特の技法であった。死に瀕して意識も途切れがちな、普通に魔法を使用するのも困難な状態で
それをやってのけたのは、奇跡的なまでに強靭な精神力と言えた。しかしその甲斐あって、とりあえず
意識は持ち直した。肉体の治癒に伴って、今まで半ば麻痺していた苦痛までもが甦り、立つ事も出来ない
状態ではあったが、当座の死の危機は去ったかに思えた。

376 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:17

全身の激痛に僅かに眉をひそめていたミコトは、しかしその判断がまだ早い事に気がついた。
煙の中をミコトを襲った「もの」が、ゆっくりと近づいてくるのが見えたのだ。
『早く…早く!』
先程の連続魔で意思力を消耗しきった今の状態では、それ以上の回復魔法を使用するのは無理だった。
そうなるであろう事を見越してリジェネを併用したのだが、起き上がったり魔法を使ったりできるまでに
回復するには、今しばらくの時間が必要だった。気は焦るばかりだが、意志の力でリジェネの回復速度が
変化するはずもなく、遂に「もの」が煙の中から姿を現した。
いや、姿を現さなかった。煙の中から姿を見せたのは、全身に傷を負って血塗れのシナとルビィだった。

377 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:18

既に自己再生が進行中で、傷は目に見える速度で回復しつつあったが、かなりの重傷を負ったのは明らかで、
2人とも苦しそうに息をついていた。
姿を現した2人を見て、ミコトの目がほんの少し見開かれた。確かに煙の中から出て来ようとしていたのは
「もの」だったのに、いつの間にかシナとルビィに入れ替わっていた事も不思議だし、蔦地獄に囚われた状態で、
アルマゲストの猛威から生還した事は更に不可解だった。
「不思議そうね…斬鉄剣で…床に穴をあけて…下のフロアに逃げたのよ…」
女優だっただけに自己顕示欲が強いのか、苦痛で喘ぎながらも解説は忘れないルビィ。
「しかし…まさか下のフロアにまであれだけの威力が及ぶとはな…逃げなかったら…確実に死んでいた…
その上…俺たちの本当の力まで使う羽目になるとは…」

異邦人召喚 VS ゴーレム召喚

378 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:19

「…本当の力?」
シナの言った言葉の意味を問うミコトに、ルビィは凄惨な笑いを向けた。
「そんな事は…どうでもいいのよ…あなたは…今ここで死ぬんだから!」
ルビィの肉体で魔力が高まっていく。空間が歪み、魔法風が周囲を吹きぬけた。召喚の前兆だった。
ガラスが割れるかのように空間が砕け、その裂け目から異国風のマントを羽織った男が姿を現した。
ほぼ同じタイミングで、魔法使用が可能なまでに回復したミコトが信じがたい速さで呪文の詠唱を終えた。
「…ハイパードライブ」
マントの男が無造作に剣を振るった。凄まじい衝撃波が艦を激震させながらミコトに殺到する。
その直前、呪文の効果が現れた。召喚魔法が完成し、突然人の形をした岩石がミコトの前に出現した。
岩石人間は身構えて衝撃波に立ち塞がる。
「ゴーレムか!」
シナが驚きの声を上げた。それは古文書には登場するものの、ガーネットやエーコを含め、
今では誰一人使う者が無く、架空の存在と思われていた幻の召喚獣だった。

379 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:20

あらゆる打撃を受け止めると謳われるゴーレムの鉄壁の防御は、万物を破壊せねばおかない
ジークフリードの必殺剣技ハイパードライブを凌ぎ得るのか。触れるものすべてを塵に帰す
無敵の衝撃波をしかしゴーレムは防ぎとめ、背後のミコトを完全に守り抜いている。
永劫とも思われた異世界の伝説同士の激突は、突然に終結した。
鉄壁と思われたゴーレムが遂に砕け散り、残った砂はハイパードライブの余波に巻き込まれて四散した。
そしてその余剰エネルギーの乱流が、ミコトを再び宙に舞わせた。
「ふ…ふふ…小娘の分際でてこずらせちゃって…」
勝利者となったルビィは、苦しい息の下で陰惨な笑みを浮かべた。

380 名前:クロマ書き 投稿日:2000/09/06(水) 03:21

床に倒れ臥し苦しげにあえぐミコトを見ていたシナはぽつりと言った。
「なあ…ジェノムってどんな具合なんだろうな?」
「はいぃ?」
顔全体を疑問符にしてシナを見るルビィ。
「お前さ、ジタンを喰った事あるんだろ? どうだったんだ?」
「はぁ…何を言い出すかと思えば」
「ジタンの昔のモテっぷりを見てると、ジェノムのカラダってのは相当イイんじゃないかと思うんだよ」
ルビィは突然飛躍した論理を語りだすシナに心底呆れた顔になった。
「で、こんな機会は滅多にないだろうし、ちょいと試してみたくなったんだ」
シナは淫欲に醜く歪んだ笑いを倒れているミコトに向けた。

 

 

異次元の技術

<<346

382 名前:346の続き 投稿日:2000/09/06(水) 03:45

ゼムス「・・Gトランス能力、それはかつて私がエスタにおいて進めていた
戦略兵器開発の際、実験的に行われた人体強化計画・・・・
「ガーディアン・レインフォース・プロジェクト」によって発明された一端であった。
単純なマインドコントロールと魔導エネルギーの応用であったのだが、
被験者の身体能力の強化を計る際にその生命を代償としなくてはならない・・いわば未完全な
発明であった・・。が、今回の私の計画、「魂の早急なる循環」において、
非常に素晴らしい効力を発揮してくれたよ・・・。
この力を用いてこの世界にて大いなる戦乱を引き起こす・・はずであったのだが、
・・ここでひとつ大きな問題点が浮上した。」

383 名前:G・T編 投稿日:2000/09/06(水) 03:47

ゼムス「・・確立された次元というものは、確固たる一つの「調和」が保たれている。
それによって別次元の世界とは、基本的に遮断された状態となる。
故に、確立された次元には別の次元に在りしものを持ち込むということは出来ない・・。
しかし、その「調和」が突然大きく乱れる瞬間が訪れた。この「ガイア」の世界においてな!!
さて・・それは・・何だと思う??」

フライヤ「・・・・・・・・・・・・・・!!まさかッ!!?」

ゼムス「・・・フライヤ・・実際に「それ」に関わったお前は良く知っているな?
・・・想像の通り・・・2つの世界の同化・・・・「ガイア」・・そして「テラ」の・・

           すなわち、それは空間の交差・・・

次元の揺らぎ

385 名前:G・T編 投稿日:2000/09/06(水) 03:48

ゼムス「・・ガイアとテラ・・この2つは同次元に在りながら、全く異なった世界でもあった。
いわば、もう一つの星、もう一つの空間、それは限りなく表裏一体に近い・・
故にこの様な現象が起こることが可能であったのであろう・・・また・・この現象に
大きく知識と力を注いだ者の存在も大きかったといえような。」

フライヤ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(ガーランドの事か・・・)」

ゼムス「同次元において2つの空間が存在するという「調和」、それがこの現象により
大きく乱され狂わされた。そして再び次元はこの「調和」の狂いを修正しようとする
働きが生まれる。今までの流れを一端、全て無に返し、新たなる流れを作り出そうとする。
それによって、その世界、その次元は、一瞬の「不安定」な状態に入る。

・・・そしてその瞬きの時間帯・・次元が「不安定」な状態になっている一時こそが!!

     ・・・・・唯一、別次元のものを持ちこむ瞬間でもあったのだ・・・・・・


 

終わりから始まる悲劇

387 名前:G・T編 投稿日:2000/09/06(水) 03:55

フライヤ「!!!!・・・(何と・・何と言う事じゃ・・あの・・あの霧が晴れたあの時が・・
・・・・全ての悲劇の始まりであったとは・・・・・・・!!!)」

ゼムス「・・世界が不安定になったその一時は、別次元のもの・・当然私もこの世界のものに
何らかの影響を及ぼす事が可能となる。
当然の事ながらGトランス能力をこの世界に持ち込む事となるが・・しかしながら、次元が「不安定」と
なっている時というのはまさに瞬きの如く、非常に短い時間。・・おおよそ半日程度にて
次元の修復作用は完了し、再び以前の「調和」が取り戻される。」


388 名前:G・T編 投稿日:2000/09/06(水) 03:56

ゼムス「すなわち私がその時この世界に影響を及ぼす事が可能な時間はわずか半日あまりの時・・。
その間に、フライヤ、お前達力を持つ7人に、全て私自らが世界中を廻り
Gトランスを与える事には、少々無理があった。・・・・・・・そこで私に代わる「代役」をたて、
その「代役」にGトランス能力を他の者全てに与えてもらうことにしたのだ。」

フライヤ「・・・代役・・・・?   ・・・・!!!!まさかッ!!!??」


ゼムス「・・私が「代役」として抜擢したのはお前達も良く存じておろう、クイナ君だよ・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げ行く男

393 名前:長文書きこめなくて辛いね 投稿日:2000/09/07(木) 04:59

アレクサンドリア城下町から少し離れたところにある森。
そこをチョコボに乗った一人の男がアレクサンドリアから逃げていた。
彼の名はブルツェン。
スタイナーの部下であった男である。
彼は、スタイナーの失脚後も軍に残って、将軍にまでなった。
そして、ダリの援軍の総大将に任命されていたのだが、向っている途中でダリは陥落。
仕方なく、本国に帰還すると今度はアレクサンドリアがリンドブルムに占領されていた。
アレクサンドリアの負けを確信した彼は、独断で部隊を解散し、
自分もリンドブルムに捕まる前にアレクサンドリアから逃げ出したのである。
ブルツェン「リンドブルム兵は、まだ気付いていないみたいだ…。
      この調子でブルメシアまでいければ良いのだが」
彼はリンドブルム兵に捕まる事を恐れていた。
捕まったら、戦争犯罪人として処刑される事は免れられないから。
一方のエーコは、彼の存在に気付いていたのだが、
彼のような小者など、歯牙にもかけていなかったので捜索命令を出す事はしなかった。
ブルツェンがチョコボを走らせていると、急にチョコボが足を止める。

光明

394 名前:エーコ-ゾディアック編 投稿日:2000/09/07(木) 05:05

ブルツェン「どうした」
ブルツェンが言って、チョコボの見ている方にを視線を向けると、そこに一筋に光が現れた。
そして、その中から血塗れの美女が現れる。
その美女は、脇腹に向こう側が透けて見えるほどの穴をあけており、顔も土気色だ。
彼女は、地面に足をついた途端崩れ落ちる。
ガーネット「エーコ…め。あれが命中する寸前にテレポを使って上手く逃げ出せたものの…。
      何故、私が…エーコごときから逃げなくては…。がはっ…」
両手を地面についていたガーネットは、喀血して地面に赤黒い染みを作り上げた。
ブルツェン「陛下…?」
ブルツェンは、チョコボから降りると、恐る恐るガーネットに近付く。
ガーネット「ブルツェン…か。何故、こんなところで…油を打っている。
      早く…散り散りになった軍を再編成して、アレクサンドリアを侵略者ども…から奪還せよ」
息も絶え絶えにガーネットがそう言うと、ブルツェンはガーネットの方に足を進める。

命が惜しい

395 名前:エーコ-ゾディアック編 投稿日:2000/09/07(木) 05:06

ガーネット「何を…しているのだ。早く…戻らないか」
ブルツェン「軍はもう解散しました。リンドブルム軍に勝つ見込みはありませんので」
ガーネット「なんだと…。誰に断ってそんな事を…」
ブルツェン「自分の判断です。それよりも陛下、エーコ大公は貴方の首を差し出したら自分を赦すでしょうね」
ブルツェンは腰からダイヤソードを抜いて、ガーネットを見下ろす。
ガーネット「…貴様。取り立ててやった恩を忘れて裏切ると言うのか?」
ブルツェン「はい。自分も命が惜しいので」
ブルツェンはそう答えると、ダイヤソードを振り下ろす。
その一瞬後、何時の間にかガーネットの手に握られていたライトブリンガーがブルツェンを真っ二つにしていた。
ガーネット「カスが…。いくら負傷したとはいえ、貴様ごときに私を殺すことは出来ぬわ」

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