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アレクサンドリア許さない×2《DISC4》

書置き

20 名前:ななしさん@おなかいっぱい 投稿日:2000/08/31(木) 19:46
イリア編続き

解放されたあと、洗面所に駆け込んだ。
何度もどしても、おぞましい感触が離れない。
こみ上げてくる涙で視界はぼんやりとし、
頭のなかにはもうなにもなかった。
老婆のくたびれた死体が視界に映る。
「悲しい」とかそんな感情は、もう生まれなかった。
なにも考えたくない。考えたら、いけない。
生きるということが苦痛に思えた。
視界の端に白いものが映った。
老婆が今まで座っていたであろう場所に
紙切れが落ちていた。
拾い上げてみると、老婆の文字だった。
「イリア…生きなさい。私の分も」
気がつくと、私は声をあげて笑っていた。
おかしくておかしくてたまらなかった。
何が、「生きなさい」だ。
最後まで自分かってな人間だった。
これから私一人で生きていけというの?
死ぬ権利まで奪おうというの?
どんな気持ちでこの言葉を残したの?
私に「おばあちゃん」と呼ばせないまま逝くの?
たった一人で逝ってしまうの?
笑い声は、とまらなかった。
それはヒステリックに部屋の中にこだました。
…あんたがそう望むのなら、
生きてやろうじゃない。
私がどんな汚いことをしてきたか
知っているあんたがそういうのなら、
とことん生きてやろうじゃない。
汚れを背負ったまま、生きぬいてやる。
こんな言葉のこさなかったらよかったと
そう思うくらい、
あんたが後悔するくらい。

私は、古ぼけた家を後にした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

禁断の質問〜聞いてはいけない事〜 

 
23 名前:禁断の質問〜聞いてはいけない事〜 投稿日:2000/08/31(木) 20:07
そうです。これは私の戯れ言と思って聞いていただければ結構です。
本当ならば私の心の中に一生しまい込んで、誰にも話すべきではないのかもしれません。
しかし、あの時の記憶は今でも鮮明に、いや年月が経つほどはっきりとしてくるのです。
このままでは私はどうにかなってしまいそうで、こうしてお伺いさせていただいたのです。
3年と少し前、私はアレクサンドリアの軍隊におりました。
天に名だたるベアトリクス将軍麾下の女部隊です。
御存知の通り、今やアレクサンドリアでは女性が軍部での出世を目指すことは珍しくなく、
私も父のすすめるまま、士官学校を卒業し、どうにか陸軍に入ったわけです。
そしてあの陰惨な戦争、そうです、ブラネ様とクジャの引き起こした戦争に参加し、
ブルネシアなどにも従軍いたしました。
ブラネ様とクジャの死によって戦争は終わり、私は生き残って多くの経験を得ました。
そして私の人生にとっての一つの結論を得ました。
私は軍隊生活にはなじまない。
そうです。厳しい規律も、古めかしい慣習も耐えられるのですが、
目の前で次々に人が死んでいく血なまぐさい毎日だけにはどうにも我慢できなかったのです。
そして、3年ほど前、つまり戦争が終わって半年ほど経過したある日のことです。
私はある場でベアトリクス将軍に退官を申し出たのです。
「私にこのような殺伐とした仕事は耐えられません」
私は泣きながらそのような内容のことを延々と訴えました。
そこには他にも多くの同僚がおりました。同僚は私の突然の申し出に驚いておりました。
ところがベアトリクス将軍はまったく動じることなく、次のように言われたのです。
「あなたのいうことはまったく正しい。あなたの抱いた感情は正常な人間のものです。
 わたしはあなたが辞めたいというのならまったく止める気はありません。
 むしろあなたにとってそれは祝福すべきことだからです。
 けれど・・・私の前から去る前に私の話を聞いてもらえないでしょうか」
私に異議があるはずもありません。私だって本当はベアトリクス将軍と離れたくない。

 

 

 

ベアトリクスの話

24 名前:禁断の質問〜聞いてはいけない事〜 投稿日:2000/08/31(木) 20:08
それに将軍のお話で無意味なものは今までまったくなかったからです。
将軍は言われました。
「私が軍に入隊したのは数年前。子供の頃から純粋に剣を振るうことが大好きで
 女性としての入隊はいつのまにか私の人生の目標になっていました。
 やっとのことで目標はかなったけれど、その頃は今と違って軍人の女性に対する
 風当たりがつよく、私も相当過酷な日々を過ごしました。
 でも、本当に過酷なのはそんなことではなかったのです」
私たちはいつのまにかすっかり将軍の話に引き込まれていました。
将軍は続けます。
「私の初陣は辺境の異教徒討伐への従軍。当時この異教徒の勢力がとても大きく、
 政府の力が届きにくい辺境の村々には大きな勢力を持っていたため、
 その討伐軍が編成されたのです。私は女性としての初陣に誇りをもってこれにのぞみました。
 ところが・・・私の目の前に繰り広げられたのは勇ましく剣を振るい、
 悪を滅ぼす正義の軍勢ではなく、何の罪もない弱々しい女子供までを殺戮する
 無慈悲なる軍隊だったのです。そして死体の山。血の海。私はそこで初めて現実を知りました」
私の同僚の女兵達はベアトリクス将軍の話を何度もうなずきながら聞いていました。
自分とかぶるのか涙ぐんでいる者さえおりました。将軍は続けます。
「私は絶望しました。私の憧れていたものはこんなものだったのか!
 理想とは絵にかいた餅に等しく、私はこの凄惨な現実のなかで生き続けなければならないのか!
 異教徒は全滅しました。私も剣を振るいました。女も子供も構わずに何人も殺しました。
 でも私の心はこの時、どれだけはりさけそうだったか!
 心臓をえぐってしまいたかった!自分を殺してしまいたかった!
 女性として初めて従軍できる栄誉とはつまり、
 女性としてはじめて戦争に参加する不名誉、不幸を得たということだったのです」
ベアトリクス将軍も少しずつ涙声になっていました。

 

 
 
 
 

新米兵の問い

25 名前:禁断の質問〜聞いてはいけない事〜 投稿日:2000/08/31(木) 20:08
まわりの女兵達はほとんど泣いています。みんな嗚咽をもらして聞いています。
「そのあとも私は地位の出世とともにますます剣と身を赤く染めていきました。
 ブラネ様の征服戦争が始まり、ブルネシア、クレイラでは更に多くの人を殺しました。
 私はもう逃げ出してしまいたかった。これ以上の殺戮を繰り返したくなかった。
 でも、できなかった!なぜならば、私がやらなくても誰かが同じ不幸を背負う。
 そして私が逃げ出せば、逆にアレクサンドリアが敵国に蹂躙され、
 もっと大きな悲劇が起こるからです。
 私は決心したのです。
 私はこの仕事を、この忌まわしい仕事をすべて業として背負おうではないかと。
 あえて冷血の汚名を受けようではないかと。
 私はこの凄惨であまりにも不幸な運命を受け入れることにしたのです」
そういうとベアトリクス将軍の眼からとめどなく涙があふれました。
眼帯からも流れている涙を拭おうともしません。
周りの女兵達は、自分の境遇を将軍のそれに反映させ、もしくは同情し、泣いておりました。
嗚咽の嵐です。当然でした。
私ももう退官するなどと言わず、一生将軍についていく決心をいたしました。
ベアトリクス将軍のこのような悲しくも強い話を聞かされて心を動かさない者などおりましょうか。
と、その時です。
たった一人、もっとも入隊の浅い、若い、見習い兵がそこにおりました。
彼女だけは涙を流さず、きょとんとしておりました。
そして彼女はまったく無邪気にベアトリクス将軍に尋ねたのです。
その質問を受けた時に見せた将軍の恐ろしい顔、それは忘れたくても忘れられません。
彼女は泣き崩れている将軍にこう尋ねたのです。
「でも、気持ちの半分は、そんな仕事を楽しんでもいたのではないのですか?」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「御武運を」

 
35 名前:ワイマール戦終了後 投稿日:2000/08/31(木) 23:45
トット「兵士は私が引き受ける。子供たちを連れて逃げろ」
ビビjr1号「引き受けるって、そんなの無茶だよ!」
トットの袖を掴み、ビビjrが泣き出してしまいそうな声で言う。
トット「心配するな。この程度の修羅場なら、昔幾度となくくぐった」
ビビjr1号「だったら…俺も一緒に戦う! 俺にだってそれくらいの
       力はあるんだ!」
握った拳を叩きつけるようにして振り、ビビjrが叫びとすら言える
強い口調で吐き出す。
その声と、こちらを見上げる真っ直ぐな瞳にトットは驚いたものの、すぐに
表情を緩め小さな副団長の帽子を剣先で引き下げた。
トット「ならば…その力で子供たちを守ってやれ」
ビビjr1号「でも…」
帽子を直しながら、尚も食い下がるビビjrに向かって、トットは抑えた
声で言う。
トット「騎士団では団長の命令は絶対だ。分かるな?」
その言葉にビビの息子はしばらくトットを見上げていたが、やがてうつむき
小さく漏らした。
ビビjr1号「はい…分かりました、団長…」
トット「よし。あの扉から一階に通じる階段へ行けるはずだ。急いだ方が
    いい」
ボコ「クエ! クエ!」
倒れた少年と足を失った少年、二人をクチバシで器用に背に乗せたボコが
鋭く鳴く。
ビビjr1号「団長、御武運を!」
背筋をピンッと伸ばし、敬礼をする彼にトットは胸の前で剣を掲げた。
トット「武運を」
それから二人はほんの一瞬見つめあい、小さく頷きあう。
ビビjr1号「さぁ、行こう!」
気合を入れるようにして声をあげ、ビビjrと子供たち、そして最後に
ボコが扉の向こうへと消えていった。
トット「さて…」
閉じられた扉の前に立ち、呟く。
敵はもうそこまで来ていた…。
 

 

現われた傭兵たち

36 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:47
トットの前に現れた兵士たち、その数ざっと五十人。だが、よく見れば
着けている鎧も、手にしている得物もバラバラ。どうやら正規軍ではなく、
傭兵らしい。
足りなくなった分の兵力を傭兵で補う。まぁ、戦時中ならばよくある話だ。
傭兵1「お前か、侵入者ってのは」
傭兵2「あーん、一人じゃねえか」
傭兵3「こいつ絶対勘違い野郎だぜ。ちょっとくらい腕が立つからって
    英雄気取ってやがんの」
傭兵4「そうそう、『子供たちは俺が助けるんだ!』ってなもんよ」
傭兵5「なー、早くコイツ殺そうぜ。女待たせてんだよなー、俺」
傭兵3「何が待たせてるだよ。死体じゃねえか」
傭兵5「うるせーな。人の趣味に口出すなよ」
何が面白いのか、そこで傭兵たちがドッと笑う。傭兵たちの笑い声を
右から左に聞き流し、トットは手にているオニオンソードで右の二の腕
を浅く切ると、剣に己の血を垂らした。
そのまま剣を振り、自分の足元に血で一本の線を引く。
傭兵1「何のマジナイだそりゃ?」
傭兵4「気にすんなって。怖くて気でも狂ったんだろ」
傭兵5「なー、なー、どうでもいいから殺そうぜ」
傭兵2「女が逃げちまうってか?」
傭兵3「だから死体だってのに」
そしてまた一同が笑う。先程と同じように笑い声を右から左に聞き流し、
それが収まったところでトットは静かに漏らした。
 

 

死線

37 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:49
トット「お喋りは終わったか? ガキ共」
その一言に、先程までにやけていた傭兵たちがにわかに殺気立つ。
トット「私は貴様らの下らんお喋りを聞いていられるほど暇ではない」
傭兵たちの殺気が、爆発寸前にまで一気に膨れ上がった。
傭兵1「だったら…死にゃあいいだろうがよッッ!!!」
それを合図に殺気が爆発し、五人が一斉に襲い掛かってくる。
短く息を吐き、トットは剣を振った。
後は只…肉が弾け、血が降るのみ。
誰一人として声を発する者はなかった。静寂が、機械の止まった夜の
工場を支配する。
目の前で起こった事が信じられない。傭兵たちは皆一様にそんな表情を浮かべ
ていた。
静寂。その中でトットは一度床に視線を落とし、足元に転がっていた男の
首を傭兵たちに向かって蹴り飛ばした。
傭兵6「ヒイッ!」
首の直撃を受けた男が情けない声をあげ、よろめく。
ダンッ!
傭兵たちを睨みつつ、トットは左手に握った剣を先程引いた血線の上に
突き立てる。
トット「死にたくなければ覚えておけ。ここが…現世と冥府の境だ」
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

到来

<<前スレ494

38 名前:前スレ494の続き 投稿日:2000/08/31(木) 23:51

―――――――――!!その思考の結論は寸断された!!――――――
・・・ベアトリクスの精神は瞬時に別の感覚へと支配される!!
それは・・いわば「精神の感応」。・・・直接・・第六感に働きかけてくる・・
互い・・互いに・・何者かが発する「それ」を・・自分だけが・・わかる・・感じ取れる・・
・・そう・・これは・・・・・・・!!!

       (・・・何者かの・・到来を意味する!!!!)

意識は全てその一点に集中し、周囲の感覚は無と消え去る。
瞳はうつろ、・・表情は消え、ゆっくりとベアトリクスの顔は
「それ」を感じ得るが方向へと、無意識然に向けられる・・・・・・
その瞳はうつろなれど、確実に「それ」を捕らえるかの様に、瞬き一つ無くかっと見開いたまま・・

今まで訳のわからない疑問を自分にぶつけていたベアトリクスが、突如、固まったかの様に
黙して動かなくなってしまった。そんな様子に気付き、訝しみ、フライヤは語りかけてみる。
フライヤ「???・・ベアトリクス・・??どうした・・?」
そして、ベアトリクスの視線の先を追っては見るが・・そこにあるは只の虚空・・・
フライヤ「・・・?(何を・・何を見ておるのじゃ・・?)」
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フライヤ「・・・・ベアトリクス・・・?」
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!来るッ・・!」

 

 

 

ビビJr1号の思い

39 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:51
ビビjr1号「団長…」
聞こえてきた怒声と足音に、ビビjrは呟いて天井を見上げた。
団長が簡単に死ぬとは思えないが、不安でないといえば嘘になる。
だが今は団長を信じるしかない。
それに…一度は一緒に戦うと言ったものの、自分が戻ったところで足手まとい
にしかならない事は分かりきっていた。
自分は六人いる兄弟の中で一番魔力が弱い。以下、歳が低くなるに従って
魔力も強くなっていく。
ビビjr号1「(ミコトお姉ちゃんが言うには完成度の違いらしいけど…)」
難しい事は良く分からなかったが、ファイラを放つのがやっとの自分と、
ファイガさえ楽に使いこなす一番下の弟。
正直、悔しいと思ったことが数え切れないほどある。
だが魔法を扱う才能としての「魔力」は、どんなに努力したところで限界
を超える事はない。
それが自分の持って生まれたものなのだから。
もっと強くなりたい。それが団長にくっついて旅に出た理由だった。
兄弟みんなを守ってやれるだけの力が欲しかった。
でも…
自分の小さな体では剣を振ることはできない。槍を扱うこともできない。
結局、旅を始めた頃の自分と何一つ変わってはいないのだ。
生まれたばかりの子チョコボが親の後をついて歩くように、ただ団長の後ろを
ついて歩くだけの自分。
ビビjr1号「俺…」
つい立ち止まってうつむいてしまう。とその時だった。
何者かによっていきなり首を締め上げられ、体が宙に浮く。

 

 

ビビJrの戦い〜油断

40 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:52
ビビjr1号「なっ…」
傭兵7「どこへ行くのかな〜。悪い子でちゅね〜」
人を馬鹿にしきった軽い声とは裏腹に、太く巨大な手が首に食い込んでいく。
息が出来ない苦しさに耐え、何とか片目を開けると、目の前にあったのは
兄弟三人が肩車したよりも大きいであろう男の、にやけた顔だった。
傭兵7「さ〜、悪い子はどんどん死にましょうね〜」
あまりの苦しさに意識が遠のく。
明らかに油断していた。敵地からの脱出。考え事をしている余裕など
なかったはずだ。
ビビjr1号「だん…ちょ…う、たす…け…」
無意識に口が開く。
が、ビビjrは最後の一文字を無理やり喉の奥に押し込むと、ローブの下から
二振りのミスリルダガーを抜き去った。
傭兵7「がああああっ!!」
絶叫と共にビビjrの体が床に投げ出される。
ビビjr1号「ケホ、ケホ…」
咳き込みながらも何とか立ち上がり、ビビjrは目の前の敵を見上げた。
拳を血に染め、憤怒に歪んだ顔で男がこちらを見下ろす。
逃げ出したかった。団長に助けて欲しかった。でも…
ビビjr1号「ここで逃げたら、ここで助けて貰ったら、
       俺は弱いままなんだっ!」
震える足を無理やり押さえ込み…小さな副団長は真っ直ぐに巨大な敵を
見据えた。
 
 
 
 
 
 

 

 

脱出

41 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:52
・・・・・・遠い・・遠い・・けれど・・私の中にある・・感覚・・波長・・・・
・・・感応・・・している・・・・互いに・・・これは・・  ・・・私と同じ!!

・・・・・近づいて・・来る・・!・・・・近づいて・・・来る・・!!・・・
・・・そして・・・感じる・・・・感じ取れる・・!!・・・・それは・・・・
・・・・そう!・・・それは・・・私?・・・私!!!・・・

        (・・私の力を求めてる・・・!!!)

・・・!急激に戻る意識!!五感が・・六感が・・全ての感覚が知らせてくれた・・!!
        (ここに居ては・・・・危ないッ!!)
フライヤが次に発するはずであった、「え?何が?」という疑問を口に出させる間も与えず、
ガバアァァァァッッ!!!!突如ベッドから飛び跳ねる様に降り、すぐさま剣を手に
隠れ家の玄関へとダッシュする!
ベアトリクス「フライヤッッ!!!!!!外へ!!!ここは・・ここは危ないッ!!」
フライヤ「!!!!!???」
一体何事か!!??しかしそのベアトリクスの尋常でない雰囲気に、
流石に何かを察したのか、フライヤも素早く槍を手に取り、後へと続く!!――

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

ビビJrの戦い〜心構え

42 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:53
傭兵7「クソガキがああああッッ!!!」
拳に刺さったミスリルダガーを床に投げ捨て、男が獣の咆哮にも似た声を
あげる。
ビビjr1号「(だいじょうぶ。やれるさ。)」
生まれて始めての実戦。緊張感とプレッシャーに押しつぶされそうになる
自分を励ます様に、心の中でビビjrは呟いた。
視線を背後にやれば、床にへたりこんだ子供たちが震えながら、すがるような
瞳を自分に向けている。
ビビjr1号「(やれるさ、じゃない。やらなきゃいけないんだ)」
汗ばむ拳を堅く握り、ビビjrは腰を落した。見様見真似で覚えた団長
と同じ構え。自分の両手には剣が握られている訳ではない。構えたとこで
何の意味があろうか。
でも…こうしていると不思議と落ち着いた。
それと同時に旅の途中で団長に言われた事を思い出す。
「戦いにあっては常に冷静でいろ。目の前の敵だけに集中するな。周りを
 見ろ。考えろ。自分の力を過信するな…」
いつだったか、剣を教えて欲しいと言った自分に団長が説いた心構え。
これがちゃんと理解できたら剣を教えてやると言われた。
そして最後に一番大切なこと…
ビビjr1号「(決してあきらめるな)」
その一言を心に刻み、ビビjrは静かに息を吐き出した。
傭兵7「ガキがあああッッ! 殺すッ! 確実に殺すッ!」
拳を打ち鳴らしながら大またで歩み寄ってくる男から視線を外し、ビビjrは
素早く「場」を確認する。
天井に走るパイプ。止まったままの巨大な歯車。貯水槽。天井から
ぶら下がっている鎖。木の床。男の背後に外へ出るための扉。
何が使える? どう戦う?
そして…一つの閃き。
ビビjr1号「ボコ!」
ボコ「クエ!」
こちらの声に答えて、ボコが体にくくられた荷物から「すべすべオイル」
の瓶を三つ、クチバシでくわえて投げる。
正に以心伝心。
投げられた瓶を受け取り、すぐさま一つを投げ付ける。
瓶は鎧に当たって割れ、男の体をオイルで濡らした。
ビビjr1号「(あと二つ…)」
遥か頭上から振り下ろされた巨大な拳をすんでの所で避け、ビビjrは横に
跳んだ。
 
 

 

ビビJrの戦い〜閃いた作戦

43 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:55
床を転がり、がら空きになった男の即頭部に二つ目を投げ付ける。
ガラスの割れる音と共に、辺りにオイルが飛び散った。
ビビjr1号「(あと一つ!)」
次々と繰り出される拳をギリギリのところで避け続けながら、最後の一つ
を投げる隙をうかがう。
傭兵7「ちょこまかと鬱陶しい!」
力任せに振り下ろされた拳が床を突き破る。
そこに一瞬の隙が出来た。
最後の一つを男の足めがけて投げ付ける。
ビビjr1号「当たれっ!」
気合を込めたその一投は男の脛に見事命中し、ガラスの破片とオイルを
撒き散らした。
傭兵7「があッ!」
痛みに思わず脛を押さえてしまった傭兵に向かって、ビビjrは右手を
かざす。
心に浮かぶは燃え盛る炎。
ビビjr1号「ファイ…」
その瞬間、突き出された男の拳がビビjrの胸をえぐった。
視界が一瞬暗転し、呼吸が全く出来なくなる。
ビビjr1号「ゴホッ、ゴホッ…」
弾き飛ばされ、数メートル床を転がったところで激しく咳き込む。
胸から指先まで痺れるような痛みが走り、今にも気絶しそうだ。
その間に男が己の巨体に似合わぬ素早さで貯水槽へ向かって走った。
水しぶきが上がり、男の体に付いたオイルが全て洗い流されてしまう。
傭兵7「残念だったなぁ! お前みたいなガキが俺様を倒そうと思ったら
    こんな手を使うしかないもんなぁ!
    どうした! ファイアでもファイラでも撃ってみろよ!」
胸までの深さがある貯水槽の中で、男が馬鹿笑いする。
確かに自分の持つ火力では、オイルにでも頼らなければ男を倒す事は
出来なかった。
だが…別に倒さなくてもいいのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

異変

 
44 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:55
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!ビュウウウゥゥ!!シュウウウウウウゥゥゥ――

2人が外に飛び出した途端!!突如地が揺れ、周囲の空気が限りなく澱み始める!!!
フライヤ「!!・・・・・・これは・・!!??」
自然の僅かな変化を敏感に感じ取る感性を持つ、竜騎士であるフライヤはすぐさま
この空間の異変を察知する!!
フライヤ「・・・!!なんという・・・大気のざわめき・・・・!!」
ふいに、ベアトリクスは顔を上げ、視線を斜め上空へと向ける!
フライヤもベアトリクスの視線の先を追っては見るが・・・・
フライヤ「??(何も・・ない・・虚空を見つめて・・ベアトリクスお主には・・何が見・・)」

ベアトリクス「・・・・・・・・・・・来た・・・・・・・ッ・・・!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビビJrの戦い〜勝利

45 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:56
ビビjr1号「ブリザラ!」
痛む胸を押さえ貯水槽、そしてその中にある水に向かって渾身の魔法を放つ。
バキッ!
何かが割れるような音を上げ、ビビjrの魔法は男ごと貯水槽の水を
凍らせた。
傭兵7号「なっ!」
胸から下の動きを完全に封じられ、男が驚愕に目を見開く。
ビビjr1号「俺の方が…少しだけ頭が良かったみたいだね」
怒りからか、それとも寒さからか体を震わせる男に向かって、ビビjrは
帽子を直しながら勝利宣言する。
初めての実戦にしては上出来だろう。
ビビjr1号「みんな出口はすぐそこだから」
しゃがみこんでいる子供たちを励まし、出口へと導く。
傭兵7「おい、待てコラ、このクソチビがッ!」
ビビjr1号「うるさい!」
叫んでビビjrは手近にあったスパナを投げつけた。
ゴスッ。
頭にスパナの直撃を食らい、男が昏倒する。
まったく…身長の伸びない自分に向かって「チビ」は禁句だというのに。
言う方が絶対に悪い。
ビビjr1号「二度目はないからね!」
そう言い残し、ビビjrは工場を後にした。
もちろん、彼の言葉が気絶した傭兵に届くことはなかったのだが…。
 
 

 

意外な再会

46 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:57
ビビjr1号「おばあちゃん…」
工場から逃げてきたビビjr達を迎えたのは、ピクルス売りの、あの老婆
だった。
ビビjr1号「どうしてこんな所に?」
まだ夜も明けきらぬリンドブルムの広場、眼の見えぬ老婆が一人で散歩を
しているとも思えない。
老婆「なぁに、トット先生の事、きっと何かしでかすと思っていたら
   案の定だったねぇ」
暗くて顔は良く見えない。でもその声色はどこか楽しそうで嬉しそうだった。
老婆「さっ、傷の手当てもあるだろうから付いておいで。すぐ近くに隠れ家
   がある。そこなら兵士たちにも見つからないはずだよ」
まるでみんなの姿が見えているかの様に首を一度巡らせて、老婆は優しい
声で言う。
子供たちは皆一様に安心したような表情を浮かべ、老婆について歩き始めた。
が、全くその場を動こうとしないビビjrに気付いたのか、声をかけてくる。
老婆「一緒に行かないのかい?」
ビビjr1号「ここで団長を待ってる」
老婆「その声の様子じゃ、テコでも動かないみたいだね」
そう言って、老婆は隠れ家までの道を教えてくれた。
老婆「兵士に見つかりそうになったら逃げておいで」
ビビjr1号「うん。ありがとう」
ビビjrの声に一度頷くと、老婆は子供たちを引き連れて去っていった。
ボコ「クエ、クエ」
列の一番最後でボコが振り返り、こちらを見ながら首を振る。
ビビjr1号「うん。分かった」
「怪我人を届けたらすぐに戻ってくる」
多分そんなことを言ったのだろう。
ボコが去ったあとで、ビビjrは暗闇に浮かぶ工場を見上げた。
ビビjr1号「団長…」
夜風がビビjrの呟きをどこかへと運び去った。

 

 

「待たせたな」

47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/31(木) 23:58
朝、小鳥たちが目を覚まし、何処からともなくさえずりが聞こえてくる。
広場には朝もやがかかり、景色を乳白色に染め上げていた。
ビビjr1号「団長…」
ボコ「クエ〜」
空は次第に白み始め、夜が明けるまでもう殆ど間がなかった。
それでもトットは来ない。
老婆「心配しなさんな。トット先生のこと、きっと無事だよ」
ビビjr1号「分かってる」
呟き、真っ直ぐに前を見つめる。
ビビjr1号「(だいじょうぶさ、きっと。『待たせたな』とか言って
       その辺から…)」
トット「待たせたな」
ビビjrの思考を中断させた声は、なぜか頭上から聞こえた。
ビビjr1号「団長!」
反射的に上を見上げたビビjrの前に、黒い影が降りてくる。
トット「すまない。遅くなった」
軽い着地音と共に地面に降り立ったトットは、長い事待たせてしまった
団員たちに向かって詫びた。
ビビjr1号「何で上から…第一、何やってたのさ!」
トット「そう怒るな。誰かさんの忘れ物を拾ってきたんだ」
ビビjr1号「えっ?」
不思議そうな顔をするビビjrの前にトットは二振りのミスリルダガーを
差し出した。
ビビjr1号「これ、俺の…」
トット「私の言った事がきちんと理解できたら剣を教えると約束したからな」
ダガーをビビjrに手渡し、トットは地面に膝をつく。
トット「剣は剣士の魂。大切にな」
ビビjr1号「うん…」
トット「それと…よく頑張った」
ビビjr1号「うん…」
ビビjrの肩を軽く叩き、トットはゆっくりと立ち上がった。それから鎧を
脱ぎ、小手を外して地面に置く。
ボコにくくられている荷物も全てを降ろし、最後に髪を結んでいるリボンを
ほどいた。長い銀髪がさっと広がる。

 

 

老婆の言葉

48 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:01
トット「これをお金に換えれば子供たちを養っていけるだけの額になる。
    しばらく面倒を見ては貰えないだろうか」
老婆「…子供たちの面倒は幾らでもみますよ。でも…先生の装備は絶対に
   受け取れないねぇ。特にそのリボンだけは」
老婆の言葉にトットは自分の手に握られているリボンに視線を落した。
老婆「先生にとって一番大切な思い出のはずだよ。そんなもの私には
   重すぎる」
トット「だが…」
老婆「それに、鎧や小手だって渡されたところで私には売れはしないよ。
   例え先生が売ってきたとしても、そのお金は受け取れないね」
トット「どうしても?」
老婆「ああ、どうしても。それに、団長が鎧も着けてないんじゃ格好がつかな   いよ。ねぇ…」
と、老婆が話し掛けた先にあったのは地面に座り込んで寝息を立てている
ビビjrの姿だった。
恐らく気が抜けたのだろう。大きな帽子がコックリ、コックリ揺れている。
老婆「この子が目を覚ましたときに先生が鎧も小手も着けてないんじゃ、
   きっとがっかりするよ。一度憧れの人になったんなら常に格好よく
   してないと。それが責任ってもんだよ」
そう言って老婆は微笑んだ。
トット「すまない」
老婆の優しさに礼を述べ、トットは鎧と小手を再び装備する。
リボンで髪をきつく結び、最後に眠っているビビjrを背負った。
規則正しい寝息が耳元で聞こえ、トットは思わず頬を緩める。
老婆「それで、これから何処へ?」
トット「アレクサンドリアに」
老婆「そうかい。ツバメも手に入れられなかったようだし、キツイ旅に
   なるねぇ」
ツバメ…リンドブルムが生産に着手したという小型の飛空艇「タイニー
ブロンコ
元はと言えば、それを手に入れるために工場へ侵入したのだが、結局
奪取することはできなかった。
少しでもボコの負担を減らせればと思ったのだが。
トット「すまないがもう少しだけ頑張ってくれ」
ボコの頭を撫で、トットは言った。
 

 

 

絆〜「暁の騎士団」

50 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:02
トット「じゃあそろそろ行く事にする。夜が明ける前に街を出たほうが
    いいだろう」
老婆「ええ、子供たちの事は心配しなさんな。きっちり面倒を見ておくよ、
   先生」
トット「はは、いい加減「先生」はよしてくれ。部下にそんな風に呼ばれる
    と照れる」
老婆「でも私は団を抜けた人間。団長とは…」
口篭もる老婆に、トットは笑みをこぼした。
トット「新兵の分際で団長にタメ口をきくような素晴らしい人材を、私が
    そう簡単に手放すと思うか? 私は…今でも君の事を団員の一人
    だと思っている」
老婆「……」
トット「では、世話になったな」
老婆に背を向け、トットは歩き出した。
老婆「………団長」
背後から掛かった、ためらいを含んだ小さな声にトットはオニオンソードを
抜き、掲げる。
トット「例え何があろうと、剣に込められた魂と絆は不滅。
    それが…世界最強と謳われた『暁の騎士団』の誇りだ」
夜が明ける前の、紺色の空にトットの凛とした声が響いた。
ビビjr1号「ん…うん…」
その声に目を覚ましたのか、トットの背中でビビjrが小さくうめく。
トット「すまん、起こしてしまったな。何でもない、もう少し寝ていろ」
ビビjr1号「うん…」
耳元で安らかな寝息が聞こえ始める。
剣を収め、トットは再び歩き出した。
一路…アレクサンドリアへ。

余談だが傭兵たちはその日の内に工場を逃げ出したらしい。
発狂した者もいるとかいないとか。
しかしながら誰一人としてその理由を語る者はなかった。
「工場には死神が出る」
ただ…そんな噂が残ったのみである。


 

 

 

 

 

異様な光景

51 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:04
突如!!!シュウウウゥゥゥゥ―――――・・ベアトリクスの視線の先・・何も無いはずの
虚空!・・それが・・何かに吸い込まれるような吸引音を発し始める!!
そして・・大気の澱みが大きく渦を巻き始め・・!そして何とその中心がゆっくりと・・
・・・・「切り開かれて」ゆく!!!!
フライヤ&ベアトリクス「!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そう・・それは決して通常ではありえない・・あまりにも・・あまりにも非現実的な現象!!
・・・何も・・何も無いはずの空間に突如!穴が穿たれたかの様な別の空間が現れるなんて!!
驚愕に固まる2人をよそに、その「現象」は、ゆっくりと進行し・・そしてついに!
虚空にぱっくりと・・どこまでも暗い・・深い・・「穴」・・「もう一つの虚空」が現れた!!

           ゴオオオウウウウウウウゥゥゥゥッッッ!!!!!

次の瞬間!!つい先程まで、・・「そこ」にあった隠れ家・・
そう・・建物そのものが・・信じられない事に、
あたかも排水溝に流されてゆく水の如くに吸い込まれていった!!
ゴオオウウウゥゥッッ!!シュウウウウウゥゥゥゥゥゥッッ!!!!
・・そして・・その「もう一つの虚空」に一瞬にして消え去った・・・!!!
フライヤ「・・・・・・・!!!!!!!!!!」
その不条理にして非現実な現象を目の当たりとし、あまりの事に声もないフライヤ。
・・・しかし、ベアトリクスは、以前表情に微塵の変化も見せる様子無く、
しっかと、その「空間」を見つめたままだ。そして―――――――――――――

 

 

蘇る記憶

52 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:06
        我が・・波長に・・・・同調(シンクロ)したのか・・

ベアトリクス「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その「声」と共に、ふいにベアトリクスの脳裏に、隠されし記憶、抜け落ちた記憶・・
それらが瞬時に蘇った!!!

     ・・・ようやくな・・(ここは)・・我の求めし・・・(そうだここは・・)
・・・只お前の・・(記憶が抜け落ちた)・・・存在を・・(白の・・・ビストロが・・)
・・・・いずれ・・・(あの時)・・・迎えに・・・・(ああそうだ・・・)必ず・・
・・・・・・・(コンデヤ・パタ・・・ドナ平原)・・・その時全て・・・・・・
・・・・・・・・・・・・(思い出した!!あの声は・・・!!!)・・・・・・・・

その時全てがその時全てがその時全てが迎えに来る迎えに来る迎えに来る迎えに来る
――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――

          迎えに・・来たぞ!!封印の・・器!!
         そして「我等」が創りしたる・・「太陽の力」!!

ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ

フライヤ「・・・・・・・!!!!何・・・何者かが・・・・!!」
          ゆっくりと「それ」は・・・
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
          虚空の・・「穴」より・・・
フライヤ「!!!!・・・・・・・・・おっ、・・お主は・・・・!」
          姿を・・・・現す・・
ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

定められしこと

53 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:09
・・・・あの日あの時、大いなる愚者共は、与えたもうた・・・・

定められし・・・・・・・・・・肉体
定められし・・・・・・・・・・存在
定められし・・・・・・・・・・運命
・・そして・・・・愚者共の・・・大いなる「欲望」を・・・・
・・与えられ・・全てを定められし・・其はかくて永き永き・・時空の彷徨の果てに
瞬きの「生」を与えられん・・・其はまさに偽りの生
「力」という「欲望」と共に「消え去りし」偽りの運命
其は知らぬがままにその定められたる瞬きを生きる
嗚呼なんという悲哀・・其は愚者共の失錯(あやまち)と「偽善」が成せる大罪なり

「欲望」は黄金の瞳、黄金の輝き、光の結晶
其は知っている・・遠き遠き・・生まれ出でし記憶の中に・・
決して思うことなかれ
決して現すことなかれ
決して知られることなかれ
其の偽りの瞬きが果てゆく時まで
其の大いなる「欲望」と共に果てゆく時まで

・・クククク・・然れども愚者共の思惑は、今、まさに我が前にて・・狂い・・果てん!
・・其は誕生・・凡き現し世の頂点とならん・・・。
・・・・そして・・其れこそが・・まことに定められし・・・真実の理!!!!

シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ――・・

・・・・・・・・現われし・・それは・・・・・・・・・・
・・・猛き凍き・・・刃の如く・・・・オーラを纏いし
・・・・・エーコ・キャルオル・・・・その身体・・
・・そして・・その背後に依りし大いなる影・・・暗黒の・・気配!!!!

 

 

暗黒の住人

54 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:10
 ・・・混沌とした時代にはいつも己の欲望に従い、己の本能を剥き出しにして社会を生きる者がいる。己の価値観のみを触覚代わりに社会を渡り歩く者がいる。その者達は他人を顧みようとはせず、また、己の価値観を疑おうともしない・・・。
 暗黒こそ、その者達にとって住みやすく、また、真の居心地のいい場所であるのだ。
 混沌とした時代に希望ももてない時代に誰がそれを咎め立て出来るであろう?


     〜街〜

 貴族のような身なりをした背の高い男が歩いていた。見るからに異様な男で、通りの者達は不審な目でその男に一瞥をくれ、見なかったことにしようとしてうつむき、そして、もう一度、その男をみた。男の後ろを・・・。男の後ろに連なるものを。
 男の後ろには大勢の腰に白い巻物だけをした男たちが鎖でつながれ、主人に従う家畜のように歩いていた。
 男は街の人々に一瞥をくれると、周りを見渡しながらうれしそうに笑った。

 「キョッ〜キョッキョッキョッキョッキョッ・・・」
 そのカン高く笑う声は夜に啼く鳥の声を思わせた。
 悪魔の鳥・・・、魔界の鳥・・・。そんな声であった。

 男は軍隊の野営している場所に近づいていく。
 「止まれ〜〜い!」
 響く張り番の声。
 男は恐れるものなどないかのように張り番に近づく。
 「兵士の補充をもってきたと隊長殿に伝えてくれい。」
 ニヤリ。
 「ホラ、行ってこいよっ。」
 ゲシッ。男は自分の連れてきた裸の男の先頭者にケリを入れる。
 「困るなあ。新兵になるものに傷をつけてもらっちゃあ。」
 そう言いながら張り番は笑って見過ごした。
 「キョッキョッキョッ、なあに、教育が行き届いているということを見せてやったまでよ。キョッキョッキョッ・・・。」
 男のいう通り、ケリを入れられた男は従順というほどに事態を受け入れていた。

 「いつもすまんなあ。ボーゲン殿。」
 野太い声が響く。おそらく、隊長であろう。ボーゲンと呼ばれた男は恭しく頭を下げる。
 「こちらこそ、お世話になっております。キョッキョッキョッ・・・。」

 男は目をクリクリと動かしながら笑うのだった。





 

 

下された命令

58 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/09/01(金) 00:48
エーコ「ああ、面白くない! どうしてポーションばかりなのだ!」
ラグナロックを使って、広場に集めた住人を一人ずつアイテムに変えていたエーコ。
だが、無力な一般市民が大したアイテムに変わるわけもなく、大抵がポーションに変化した。
つまらなそうな表情のエーコにナタリーが近付く。
ナタリー「殿下。ガーネットは、アンデッド兵と共に城に立てこもっている様です。
     如何なさいますか?」
エーコ「フン…ガーネットは逃げ出していなかったのか。
    まあ、良いわ。いずれ始末せねばならなかったのだ。今、引導を渡してくれる。
    マリン! お主とその部下は住人を監視せよ、残りは城内に突入だ」
エーコはそう言った後、シナを手招きする。
シナ「どうなさいました」
エーコはシナの耳元に口を近づけてこう言った。
エーコ「最早、我々の勝利は目前だ。まもなく、あの城も我手に落ちるであろう。
    そんなときに悪いが、お前はタイニーブロンコを使ってリンドブルムに戻れ。
    そして、ルビィを連れてジタンの元へ向うのだ」
シナ「分かりました」
シナは、エーコに敬礼すると、目の前から姿を消した。
 
 
 
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