特別支援教育サービスを受ける手続き アメリカの特別支援は子供ができるだけ通常の教育から隔離されずに通常の授業だけでは足りない部分を補うようにプランされます。ですから、教科によって特別支援のリソースの先生やパラプロフェッショナル(アシスタント)が子供の教室内で個人的にサポートしたり、教室内でサポートするのが難しかったり効果のみられない場合に限って、リソースの先生や言語病理士・作業療法士などのオフィスで個人もしくはグループで補習授業を受けたりします。小学校では、発達面を促す必要性から部分的なサポートを受ける子供も多く、サポート内容も多岐に渡っているので、誰がどんなサービスを受けているのかを把握すること自体難しく、サポートを受けている子供が指差されたり目立つような雰囲気はありません。校舎内を見回すとサポートを受けに移動している子供やサポートをするために各教室に移動している先生やセラピストやパラプロフェッショナルの多さにびっくりされることと思います。日本に比べて、特別支援は公立学校のシステムの一部として機能しているため、ほんの部分的サポートであっても利用できるようになっているのです。特別支援のサービスを受けるための手続きの流れは次のようになっています。
- 先生や親から特別支援教育サービスの必要性が提言されます。(特別支援教育サービスを受けたことがない場合は、大抵介入プログラムで補習を受けてその効果の評価がなされてからになります。)ケーススタディ評価(教育ニーズを測る各種検査)を希望をする場合は校長先生宛てに口頭ではなくなるべく手紙で伝えましょう。
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- 特別支援教育サービスにおける手続きや権利についての説明があり、提言がされてから、10日以内に親からのケーススタディ開始の許可が必要になります。許可が降りると、それが学区に通達されます。
特別支援教育サービスを受ける基準に満たないと判断された場合は、サービスを受ける資格が得られない理由が説明されます。判断に不服な場合はイリノイ州教育委員会に申し立てをすることができます。
あくまでも特別支援教育サービスは学習活動に障害が出ている場合に受けられるものであり、例えば、ADHD(注意欠陥多動性障害)や何らかの疾病、身体・心理の障害があっても、学習そのものに影響がない場合は特別支援の対象にはなりません。(そのような場合は学習活動以外の便宜としてSection 504プランとして学校側で対応します。)
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- 子供に対する偏見を減らし、子供の学習問題を多角的に見るために複数の専門家が必要な検査を行います。普通、テストや行動観察、聞き取り調査などが行われるのですが、その際、親は子供に関する必要な情報を提供する責任があります。例えば、以前あった事故や病気、入院や薬、過去の療法や検査の記録、現在までの子供の心身や学習の発達過程、子供の性格や家庭での様子、家族の情報などが必要とされます。ケーススタディ評価は親の許可が降りてから学校のある60日間以内に全て終了します。(つまり、土・日・祭日・休暇を除く60日間。)
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- 評価に関わった専門家、特別支援に携わるスタッフなどがチームとして集まり、各専門家から検査結果が報告され、その結果を基に特別支援教育サービスの必要性を評価・判断し、決定報告されます。カンファレンスで話し合われた内容は概要としてまとめられ、カンファレンス終了時に渡されます。決定に不服な場合はイリノイ州教育委員会に申し立てをすることもできます。
カンファレンスの日程は10日以上前に親に知らされます。10日以内の場合は親の承諾が必要になるので、許可のサインを求められます。都合の悪い場合にはすぐ日程変更のリクエストをしましょう。カンファレンスには親もチームの一員として参加するのですが、英語に不安な方は通訳をしてくれる人にも同席してもらいましょう。
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- 特別支援教育サービスの必要性が確認されたら、個人教育プラン(IEP:Individualized Education Plan/Program)の内容が決められます。大抵、子供の長所・短所が考慮に入れられ、年間の目標と目標達成のためのステップ、必要なサポートの種類や手段、サポートを受ける場所や時間などの案が専門家やサポートを実行するスタッフから出されます。(初めてサービスを受ける場合は、サポートを開始する前に親の許可が必要になります。)
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- 毎年チームで集まってIEPの内容と子供の学習状況が確認されます。(このミーティングはAnnual Reviewと呼ばれます。)ミーティングの前に各専門家が子供の学習状況に関する情報を集め、チームに報告し、必要な内容変更などがあれば、ここで話し合われます。子供の学習状況を示すような情報を集め、以前渡された書類などに目を通しておきましょう。
3年ごとに再評価(Reevaluation)が行われ、特別支援教育サービス維持の必要性やプログラムの適宜性が再確認されます。手続きは上の2番目からの繰り返しになります。
*学習目標が予想より早く達成されてしまった場合や目標内容の変更をしたい場合は、学校側からでも家庭側からでもチームの召集をかけることがいつでもでき、目標の変更が行えるため、Annual Reviewを待つ必要はありません。*手続きに必要なリクエスト用レターの英文サンプルは、『先生との連絡:英文例』のセクションにリンクがあります。
05/21 revised