特別支援教育関連用語集


特別支援教育では様々な専門用語や略語が頻繁に使われます。カンファレンスなどで専門用語や略語の飛び交うスタッフ同士のやりとりを目の当たりにしたり、実際スタッフから専門用語入りの説明を受けたり、見たこともない単語の並んだレポートを読んだりしなければならないこともあると思いますので、参考になりそうな語句を集めてみました。(日本語の特別支援教育専門用語の知識がありませんので、訳語が間違っているかもしれません。あしからず。)用語集に含めてほしい言葉がありましたら、お知らせ下さい。



BCDEFGHILMOPRSTV

ADA (Americans with Disabilities Act)

障害を持つ人を差別行為から守るための法律で、差別された場合、賠償と処罰を求めることができます。

Adaptive Behavior

生活環境での実践スキル。年齢や社会の標準に合った個人的独立と社会的責任の度合い示すものです。たとえば、幼児だったら“自分で靴下をはける”とか“スプーンを使って食事ができる”といった生活に必要なスキルのことです。知的発達障害(Intellectual Disability)の診断をする際に知能の発達と共に判断基準の大きな目安になる発達分野になります。

Adaptive Physical Education

身体や健康上の理由、その他の障害によって通常の体育の授業では身体発達のニーズが満たせない生徒のために、個人に合わせてカリキュラム内容を変更した体育プログラム。

ADHD (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

注意欠陥多動症・注意欠陥多動性障害。学習進度に支障がある場合は、IDEAの他の健康障害(Other Health Impairment)カテゴリーで、学習活動への参加に支障がある場合は、504プランのサポート対象扱いとなります。症状は、注意欠陥が強く出るタイプ、衝動・多動が強く出るタイプ、両方見られるタイプと3通りに分かれています。原因は完全には解明されておらず、複数の要因が重なったり、組み合わさったりして起こるのではないかと言われていますが、今のところ、脳の前頭葉から辺縁系、そして、衝動抑制をつかさどる部分の生物学的機能不全という見方が強いようです。LD(学習障害)や Conduct Disorder(社会行動の障害)と区別するのが難しく、北米では3〜5%(クラスに1人ぐらいの割合)の子供に見られ、そのうち4〜9:1の割合で男の子に多いと言われています。

Annual Goal

IEP(個人教育プラン)に含まれる子供の年間学習目標。年間の学習発達の評価とそれに伴う次期年間目標の確立を行うミーティングはAnnual Reviewと呼ばれます。

Anxiety Disorder

不安障害。過剰な不安感や恐怖感をともなう子供によく見られる精神問題であるにもかかわらず、見逃されたり放置される場合が多いものです。年齢、性別や症状も様々で、同時に複数の症状を併発することが多いと言われています。特に学習活動に影響すると思われるものは、Separation Anxiety Disorder(分離不安:親と離れることに不安を覚え、登校拒否などを起こす)、Generalized Anxiety Disorder(慢性不安:常に不安を感じ、胃痛や腹痛などよく起こす)、 Social Phobia(社会恐怖症:注目の的・評価対象になることを恐れたり、不慣れな環境や見慣れぬ人を恐れる;学校環境に限って話せなくなるselective mutismなど)、 Obsessive-Compulsive Disorder(強迫神経症:繰り返し起こる煩わしい観念や思考が不安感を起こし、不安を和らげるために形式的な行為や強迫観念にとらわれる;手を洗い続けたり、同じことを確認し続けたり、整頓し続けたりするため、日常生活活動に支障をきたす)、 Posttraumatic Stress Disorder(PTSD:外傷後ストレス障害:強烈な外傷的事件の後に恐怖感が続くもので、他の障害と同じような症状を起こしやすい)などがありますが、 Schezophrenia(精神分裂症)など、その他の精神障害が認められた場合は、その障害の中の症状として扱われます。

Asperger Syndrome

アスペルガー症候群。認知的発達にはほとんど支障が見られないのですが、社交性に問題が見られ、偏狭な興味の持ち方や詳細のみに拘るといった特徴が見られます。現在は自閉症スペクトラムの範疇に入っており、アスペルガー症候群という診断名は使用されなくなりました。言語発達遅滞や言語操作問題は見られません。併発しやすい症状は、Anxiety Disorders、ADHD、Depression(抑鬱症)、Tourette's Syndrome。男女比率は男の子が圧倒的に多いと言われています。

AT (Assistive Technology)

補助テクノロジー。学校での生徒の学習活動における機能を高めるために何かしらのテクノロジーや機械器具使用に伴うサービス(ニーズの評価、ニーズに合った機械器具の供給、器具使用の訓練、家族やスタッフへの説明等)を供給するという教育関連サービスの一環。特別支援の他、関連サービスや通常の学級での活動補助の目的で要求できます。発話に障害のある人が周りとコミュニケートするために使用する“Touch Talker”(絵付きボタンを押すと単語やフレーズをしゃべる機械)などがよい例です。

Autism Spectrum Disorder

自閉症スペクトラム障害・自閉症。脳の発達障害や中枢神経系の損傷などにより、発達進度や知覚調整、言語・認知・知的発達、他人との関係をはかる能力に影響が出るため、言語や非言語コミュニケーション、社交性、知覚組織に大きな支障が起こります。4:1で男の子の方が多く、ほとんどの場合3歳までにその特徴が見られ、その後の学習活動に影響が出ます。(しかし、幼児期に自閉症に似た症状がみられても実は言語発達の遅れであったとか、社交性の問題が小学校に上がったら全く見られなくなり学習障害だったという例もありますので、早期診断の誤診もないわけではありません。)原因はまだ解明されておらず、自閉症を完全に治す医学的対処法も現在のところないとされています。早期介入と教育が最も効果的な対処法とされています。10,000人に少なくとも4〜5人ぐらい、最近は12〜15人ぐらいの割合ではないかと言われています。特別支援のサービスを受けている障害を持つ子供の中で自閉症のカテゴリーに入るのは現在は10%をやや上回り(2017〜2018年度)、自閉症の占める割合が増加傾向にあります。自閉症スペクトラムの中でも症状の軽度のHigh-Functioning Autism(高機能自閉症)は自閉症全体の2/3〜3/4を占めているとされています。高機能と判断される場合、認知学習能力に支障がなく、言語習得は、初期に問題が見られますが、後にほぼ年齢相応内容に達します。アスペルガー症候群に非常に似ています。

Behavior Management Plan

行動管理プラン。教育や成長、社交性など、子供の能力発達の妨げになる不適当な行動を絞って、よりよい行動に変えていく包括的なプラン。たとえば、幼稚園で落ち着きがなくいつも歩き回る子供に対して、いきなり椅子に座らせるのではなく、まず、椅子の代わりに特別なクッションを用意して床のクッションに座ることを習慣づけ、それができるようになったら、椅子に座るように仕向けていったり、毎回、クッションや椅子に座ったら、褒美にステッカーをあげ、ステッカーが10個集まったら、自分の好きなお菓子を持ってきてよい…などというシステムを利用して行動の習慣を確立していきます。

CAPD (Central Auditory Processing Disorder)

中枢聴覚処理障害(?)。言語病理士やサイコロジストの検査だけでは診断できません。よく聴力障害と間違われるのですが、聴力や知能そのものには問題がなく、聴いた音に注意を向けたり、区別したり、認知したり、理解するのに支障のある障害です。スピーチや言語のスキルの発達に問題が出てきます。対処法としては、スピーチ・言語療法、環境の改良、コンピュータ使用の療法などがあります。

Case Study Evaluation

ケーススタディ評価。子供の特別支援を必要とするユニークな学習ニーズ、長所や興味などに関する情報を集める方法。各種テスト、行動観察、各種記録の調査、子供・親との面接・聞き取り調査などが検査方法としてよく用いられ、時間をかけて、子供の運動、言語、知能、学習、社会・情緒、日常・実践といったあらゆる面のスキルの発達を複数の専門家の検査を通して集めた情報で子供のニーズを評価をします。そしてその評価により特別支援教育サービスを受ける資格があるかが確認され、IEP(個人教育プラン)の内容が決められます。

Cerebral Palsy

脳性小児麻痺。出産前・中・後の発達段階にできた脳の損傷によって起こる治癒不可能な障害症状。1,000人に2〜3人の割合と言われています。バランス感覚の欠如、歩行や運動の問題、言語障害、認知障害などが見られます。

Conduct Disorder

社会行動の障害(?)。言葉によるものも含む攻撃的行動、反抗癖、無責任、権威に対する挑戦的態度といった特徴が見られ、学校やその他社会的機関の行動規定に適応しないものです。IDEA下の特別支援教育サービス対象であるED(情緒障害)の範疇に入れるかどうかで論議があり、障害ではなく社会不適応として特別支援教育サービス対象外にすべきだという見方、非行や犯罪に走る可能性が非常に高いので、後の社会への影響を考慮してサービス対象とすべきだという見方に分かれているようです。

Conference

MCD、IEP、Annual Review等のミーティングの総称。カンファレンス。

Cooperative・Special Education Cooperative (略してCoop)

特別支援教育協同組合(?)、公立特別支援教育機関。複数の学区が共同の管理組織を利用して特別支援サービスを供給するというシステムの任意団体。特別なニーズのある生徒がそれほど多くない複数の小さな学区がCoopに所属している各種専門家にサービスを頼んだり、各学校のサイコロジストが障害の重度を判断し、重度障害の場合にCoopのスタッフやプログラムが利用されるという形が多いです。

Curriculum-Based Assessment/Measurement

特別支援教育で重要になりつつある評価方法。学級内カリキュラムの中での学習進度を確かめるもので、頻繁にテストをすることによって、子供の微妙な学習変化や先生の授業効果などがわかります。内容は、リーディングの速さと正確さ、スペリング、作文、計算などの基本スキルが中心で、どのテストも5分以内に終わる短いものです。

DD (Developmental Delay)

発達遅滞。全身や作業運動、言語、学習、社会、生活スキルや能力の発達が一般的に予想される時期に見られない発達遅滞の可能性が高いと診断された状態を持っている乳幼児を説明する言葉で、早期教育介入サービスが必要とされます。集中的な介入によって年齢相応のレベルに達した場合は障害とは認定されません。DDというカテゴリーは特別支援教育サービスでは現在は9歳までしか使われません。

Deafness

重度の聴覚障害で、補聴器の有無に関わらず言語情報を処理することができない状態。

Down Syndrome

ダウン症候群。染色体異常が原因で、特徴のある顔貌と知的発達遅滞が見られるもの。知的発達遅滞が起こる直接の原因は解明されていません。経済反応や社会性の発達は比較的よいとされています。母親の出産年齢が高くなるにつれて出現率が高くなると言われています。

Due Process Hearing

特別支援教育では、学区が子供に適切な教育を施していないと思われる場合、審問(hearing)を起こすことができます。その場合、家庭側が主張する証拠を集める責任があるのですが、学区の不手際が証明され、子供が別の学校に移らねばならない結果になった場合、学区が交通費や学費などの必要経費を負担することになります。

Dyslexia

読字障害・失読症。読書能力に影響を及ぼす学習障害で、文字や数、単語の認知や記憶が難しく、読むスキルでは文字を正確に認知出来なかったり単語の文字列を逆向きに読んだり、書くスキルでは正確なスペル(文字の順番)が思い出せなかったり文字を逆向きに書いたりする症状がみられます。最近の研究では、Dyslexiaの症状がみられる子供は視覚プロセスの問題だけでなく、スピーチ音の聞き分けやスピーチ音と文字の関連を理解するところでつまづいているケースの方が多いことが確認されています。

Early Childhood Education

早期幼児教育。3〜5歳までで早期教育介入が必要とされる子供に施される教育プログラム、および、サポートサービス。登録資格の有無には Case Study Evaluationの結果が必要です。

ED (Emotional Disability)

情緒障害・感情障害。内面化してしまう行動問題で、感情表現、感情の対処に支障がある状態。比較的長期間、次にあげる症状のうち少なくとも1つが重度に見られる場合、特別支援教育サービスの対象になります。
  • 知能面、感覚面、健康面から説明不可能な学習困難を起こしている
  • 他の子供達や先生達と良好な対人関係を作れなかったり、関係を維持できない
  • 普通の状況で不適当な行動を起こしたり、不適当な感情を持つ
  • 特定の原因もなく不安や憂鬱な気分を絶えず持っている
  • ESL (English as a Second Language)・EL (English Learner)・ELL (English Language Learner)

    英語を家庭の第1言語として学んでいない場合で、英語の熟達度はLimited English Proficiency(LEP)からBilingualismまで幅広く分かれます。従来はESLと呼ばれていましたが、現在は呼び名が多様化しており、州によって正式な呼び方が異なります。イリノイ州はELが正式な呼び方になりました。

    Extended School Year

    特別支援を受けている場合に必要とされるサマースクール。夏期休暇などに、教育プログラムがないと子供のスキルが急激に落ちてしまうおそれがある場合、IEP(個人教育プラン)に沿って、子供が休暇期間中に特別支援の教育サービスを受け続けることができます。

    FAPE (Free Appropriate Public Education)

    法律で、子供は特別支援教育や関連サービスを含めて無料で適切な公立教育を受ける権利があるとされています。視覚・聴覚障害がある場合は出生後からのサービスが受けられます。教育プログラムやサービスは全てIEP(個人教育プラン)に示された目標や指針を元に行われなければなりません。

    Fetal Alcohol Syndrome

    胎児期アルコール症候群。母親の妊娠中の飲酒によって胎児に障害を及ぼすもので、頭や顔面の異常、心臓の障害、出生時体重の減少、知的発達遅滞などの特徴が見られます。母親の妊娠中の飲酒が全てFASに繋がるわけではなく、胎児に影響するアルコール量もわかっていません。母親の年齢、アルコールの飲酒歴などが関わっていると考えられています。FASの子供を持つ母親は、75%の確率で次の子供もFASを持つと言われており、アルコール中毒の母親の場合、下の子供にいく程、アルコールの影響が強くなります。FASと診断された子供達の多くは母親と暮らしていません。毎年1,000人に2〜3人の乳幼児がFASと診断されています。

    Fine Motor

    指先の細やかな筋肉の作業運動機能。たとえば、書いたり、タイプしたり、はさみを使ったりするのはFine Motorの働きです。Fine Motorの発達に問題がある場合はOccupational Therapist(作業療法士・OT)が療育担当します。

    Functional Behavior Analysis (FBA)/Functional Analysis of Behavior (FAB)

    行動機能分析。授業を中断せざるを得ない程の感情や行動の制御に困難のある生徒の行動を改善するため、ターゲットの問題行動がいつ、どこで、どれぐらい頻繁に、どんな形で起こるのかデータを集め、そのデータをもとにその行動の機能的な理由を考え、機能を変えずに社会的に受け入れられやすい代わりの行動を促すBehavior Intervention Plan(行動介入プラン)として改善策をデザインします。行動介入プランがIEPに組み込まれると問題行動が起きた場合に先生やその他のスタッフが皆同じように対応することが出来るので、生徒にとっても自分の行動が原因で起こる結果(=大人側の対応)がわかりやすくなり問題行動の頻度が減ってきます。一部の自閉症の生徒とほとんどの感情障害の生徒は行動が落ち着くようになるまでFBAが実施され、IEPに行動介入プランが含まれています。

    Gross Motor

    大きな筋肉の全体運動機能。たとえば、歩行やジャンプなどはGross Motorの働きです。Gross Motorの発達に問題があり、身体の動きや姿勢の調整、補助装置使用の場合はPhysical Therapist(理学療法士・PT)が療育担当します。

    Hearing Impairment

    聴覚障害。不変性でも変動性でも子供の学習活動に影響が出る状態ですが、deafness(聾唖)とは区別されます。

    Hearing Officer

    審問官(?)。特別支援教育関連のDue Process Hearingで裁判官の役割をする州から任命された人。

    IDEA (Individuals with Disabilities Education Act)

    アメリカの特別支援教育の柱となっている法律。詳しくはこちらをどうぞ。

    IEP (Individualized Education Plan/Program)

    個人教育プラン。個人のニーズにあった特別支援教育のサービスプラン。(学区によってプログラムと呼ばれたりプランと呼ばれたりします。)プランの内容は、保護者、通常学級・特別支援の先生、特別支援に携わる専門家スタッフなどからなるIEPチームによって決められます。詳しくはこちらをどうぞ。

    IEP meeting

    IEP(個人教育プラン)の内容を決めるミーティングで、最低年に1度は招集がかけられます。ミーティングに集まるIEPチームは、子供の保護者、通常学級の先生、特別支援の先生、校長先生、評価内容を解釈できるスタッフ、専門家、場合によっては(大抵16歳以上)子供自身などが含まれます。

    Inclusion

    包括的な教育アプローチ。全ての子供達は個人のニーズに合った教育をされるべきであるとともに、1つの教育システムに還元されるべきだという哲学から応用された、障害を持つ子供達は、その他の子供達と隣り合わせの環境で教育されるべきだという見方。

    Intake

    IEPを既に持っている生徒が別の学区に転校した場合に、ケーススタディ評価をやり直さずに既存のIEPの内容を新しい学校のスケジュールや授業形態に合うように取り入れること。だいたい転校して間もなく保護者も含めたチームミーティングが開かれて特別支援サービスの内容を確認します。

    Intervention

    問題解決のための介入。子供の心身・学習の発達が一般的に予想されるレベルとかなり差が見られる場合に、状況を改善するために介入すること。

    Intellectual Disability

    知的発達障害。知能と生活機能(Adaptive Behavior)の発達に著しい遅れがみられ、概念、社会性、日常スキルがかなりゆっくり発達するため、継続的なサポートがないと年齢相応の社会生活や自立した活動をするのに困難が予想される発達障害で、誕生から18歳までの発達時期に発症するとされています。5歳未満の幼児期にはGlobal Developmental Delayと診断されている場合が多いです。症状の重さにはかなりばらつきがあり、mild、moderate、severe、profoundに分けられます。人口の約3%ほどの人がIDを持つとされ、男性が女性よりやや大目と見られています。IDを持つ子供の多くには、感覚欠損、CP(脳性小児麻痺)、Epilepsy(癲癇)など、他の身体的な障害や発達障害も見られ、広範囲の機能発達に影響が見られます。学校の通常の学習カリキュラムに沿った学習・社会発達をしないので、特別支援では個人に合った教え方を通して個人のペースで学習面や生活スキルの基本的なスキルの発達を促す形になります。名前がよく変わる障害カテゴリーで昔はMental Retardationと呼ばれていましたが、現在はMRは偏見や差別を含む呼び名と捉えられています。

    Itinerant Service

    巡回教育サービス。子供の教育サポートのために、サービスを供給する側(先生やセラピスト)が子供のところへ出向くことで、家や病院での個人教授、よくあるケースでは、聴覚障害のある生徒への補聴器やFMシステムの使い方やそれに伴う言語発達や精神的なサポートをする聴覚スペシャリストや視覚障害のある生徒への点字の学習や授業参加へのコーチをする視覚スペシャリストのサービスなどがあります。

    LD (Learning Disability)・SLD (Specific Learning Disability)

    学習障害・限局性学習障害。言葉の理解や使用に必要な情報処理過程の機能不全で、読み書きや計算など(listening, speaking, reading, writing, mathematics)のうち最低1つの分野で学習が著しく困難な状態をさしますが、視覚・聴覚・運動面の障害、知的発達障害、情緒障害、外因的な問題が主要な原因である場合を除きます。脳の中枢神経系の問題と考えられており、治癒不可能とされています。確かな数字は不明ですが、おそらく5〜15%の子供達が学習障害を持っていると言われ、特別支援教育サービスを受けている子供達の障害のうち、学習障害は全体の33.6%(2017〜2018年度)を占めていると言われているのですが、学習障害の占める割合はやや減少傾向にあると言われています。

    LRE (Least Restrictive Environment)

    通常の教育環境からの制限を最小限に留めた学習環境。IDEAで規定されているもので、障害を持つ子供のニーズに最も効果的に適合すると考えられる特別支援教育環境。いくつか教育環境の選択がある場合は、制限が少ない方(より通常の教育に近い形態)を選ぶことが推奨されています。詳しくはこちらをどうぞ。

    Mainstreaming

    特別支援を必要とする子供の通常の学級への参加。教育的・社会的な統合という目的で、少なくとも部分的な学校活動を通常の学級で行うことを指し、IDEAでも特別支援教育環境として好ましいとされています。

    Manifestation Determination

    障害を持つ子供が不正行為を行い、10日以上の停学処分、または、教育環境の変更、もしくは、年間10日制限に達する場合に、IEPチームによって行われなければならない子供の不正行為と障害の関係性を確認する過程。

    MD (Multiple Disabilities)

    複合障害(?)。知的発達障害を含む2つ以上の障害の組み合わせによって、重度の教育ニーズがあること。IDEAの独立したカテゴリーになっている、deaf-blindness(盲聾二重障害)は含まれません。

    MDC (Multidisciplinary Conference)

    多角的評価ミーティング(?)。IDEAで定められているミーティングの形態で、通常・特別支援の教師、サイコロジスト、ソーシャルワーカーなど、いろんな関連分野の専門家が意見を出し合い、子供の特別支援教育を受ける資格の有無を決定します。Multidisciplinary Teamには保護者も含まれます。子供の評価をいろんな面から測ることで、個人の専門家による検査においての偏見を抑える効果もありますし、状況の解釈や対策の提案などにいろんな意見を検討できるメリットがあります。

    Mediation

    調停。家庭側と学校側で子供の教育に関して意見の食い違いが出た時など、希望があれば州の教育委員会が調停者を出し、任意に問題解決を行います。Mediationで解決できない場合は、Due Process Hearingに進みますが、MediationはDue Process Hearingの申請の有無に関わらず希望を出すことができます。

    MTSS (Multi-Tiered System of Supports

    公立学校で採用されている通常のクラス内から特別支援までの段階別介入システム。以前はResponse to Intervention (RTI)と呼ばれ、学習面の介入だけでしたが、最近は感情面や社会スキルの介入にもこの形が使われるようになりました。原則として介入プログラムは科学的研究による根拠のあるものを使用し、介入効果をデータで判断して、介入プログラムへの参加、プログラム参加の維持、プログラム卒業(?)、次のレベル(Tier)のプログラムに移行、特別教育支援の必要性などを決定していきます。大抵、レベルが高くなるごとにプログラム参加の頻度が多くなり、介入時間が長くなり、グループの人数が少なくなります。MTSSが採り入れられるようになってから、特別支援を受ける前に生徒が介入を受けることが出来るようになり、問題の悪化をある程度防げるようになりました。

    Orthopedic Impairment

    身体機能障害(?)。重度の身体の形態的異常を持つため、学習活動に影響が出る場合をさし、先天的なもの(湾曲足や身体の部分的欠如など)、病気によるもの(Poliomyelitis:急性灰白髄炎、Bone Tuberculosis:骨結核?など)、その他(CP=脳性小児麻痺、切断、骨折や火傷による筋肉や腱の痙縮など)の原因が含まれます。

    OT (Occupational Therapy)

    作業療法。食事、着替え、衛生など指先の作業を中心とした自己管理作業の発達を促進するものです。療法に必要な検査内容には、教材の操作や学習活動に必要な筆記、ハサミの操作などに必要な筋肉の動き、身体の動きや姿勢の維持などの神経筋肉骨の構成部分、感覚の認識・統合スキルなども含まれます。子供の教育経験として統合された形で、学級活動と密接に関連するように施されます。

    Other Health Impairment

    慢性、または、急性の健康問題のために、体力・活力に限度があったり、環境の刺激に敏感過ぎるために重要な刺激を区別することができず、教育環境で必要とされる注意力に問題が見られる場合が含まれます。具体的には、asthma(ぜんそく)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、diabetes(糖尿病)、epilepsy(癲癇)、心臓障害、hemophilia(血友病)、lead poisoning(鉛中毒)、leukemia(白血病)、nephritis(腎炎)、rheumatic fever(リューマチ熱)、sickle cell anemia(鎌状赤血球貧血)などがあります。学習活動に影響のある場合にのみ、特別支援教育サービスの対象とみなされます。

    PDD (Pervasive Developmental Disorders)

    広汎性発達障害。Autism Spectrum Disorderと同義で現在は診断名としては使用されていません。遺伝子や中枢神経系の構造上の問題、先天的な感染などが原因で起こる、社会性、コミュニケーション、行動、認識、時には運動面など、様々な面の発達に遅滞や異常が見られる障害をまとめて示していました。

    Placement

    IEP(個人教育プラン)に従って教育サービスが施される環境。どこで教育支援を受けるかということ。Instructional Placementは、子供が半日以上特別支援学級で学習する場合を意味し、Self-Contained Placementとほぼ同義です。Resource Placementは、子供が半日未満の特定の教科など部分的な教育サポートを受ける場合を示します。サポートを受ける場所はResource Roomと呼ばれます。

    PT (Physical Therapy)

    理学療法。身体の動きや姿勢の調整に必要な補助装置への適応も含めた身体の運動機能を促進するものです。療法に必要な検査内容には、安全面、姿勢の調整を含む筋肉の運動機能、運動と姿勢の制御に必要な神経筋肉骨などの構成部分、建築上の便利面、車椅子、歩行器、特殊座席や特殊空間等の補助装置の適切な使用法、移動面、学校やコミュニティの交通手段なども含まれます。子供の教育経験として統合された形で、学級活動と密接に関連するように施されます。

    Referral

    照会。子供が特別支援の必要性があるかもしれないという学区への通知です。通知は文書で行った方がよいとされていますが、口頭でも無効にはなりません。通知が行われると、特定のスケジュールが決まってきます。

    Reintegration

    特別支援学校に出席していた生徒が公立学校で機能出来ると判断され、公立学校に戻ってくること。

    Satellite Program

    他の校舎で授業が行われるプログラム。たとえば、Cooperative運営の特別支援学校に全日とどまる必要のなくなった生徒のために、Coopが学区内の学校の教室を借りて授業をするといった場合です。

    Section 504

    1973年のRehabilitation Actという法令中の504番目のセクションという意味。連邦の資金を受けているプログラムや活動団体は、障害を持つ人に対して、活動参加を拒絶したり、活動における利益を拒否したり、差別をしてはならないという法律。

    Selective Mutism

    場面緘黙症。学校などの特定の社会的環境でしゃべることができない、もしくは、しゃべろうとしない症状で、家やその他の環境では問題が見られません。不安障害と共通点が多く、社会恐怖症の一種であるとの見方が強いようです。家庭では普通に過ごしているので、大抵学校から報告があり初めて子供の場面緘黙症を知ることになります。

    Short-Term Objective

    短期学習目標。IEP(個人教育プラン)に含まれるもので、各Annual Goal(年間学習目標)に最低1つの短期指導目標が入っていなければなりません。大抵、学期ごとに短期学習目標が立てられます。

    S/L (Speech and/or Language Impairment)

    言語障害。コミュニケーションの障害で、stuttering(どもり)、発音障害、言語障害、発声障害など、子供の学習活動に影響する症状を指します。

    SLP (Speech and/or Language Pathologist)

    言語病理士の略。

    Spina Bifida

    脊椎披裂。脊椎の発達欠陥で、身体の部分的麻痺が起こります。重度のものになると下半身の虚弱や麻痺が起こり、排泄の制御に支障が出、身体の形態的異常が見られます。しかし、多くの子供は知的発達には異常がなく、環境的な条件さえ整えれば特別支援教育は必要ありません。

    Standardized Test

    標準テスト。国内や州内など、比較的大きな人口を基に割り出された子供の達成具合の標準がわかっているテスト。各専門家がケーススタディ評価のための検査に使用するテストは標準テストがほとんどで、被験者間の比較がより正確になるようにテストの実施の手順などにも規定があります。普通、年齢や学年ごとに標準が示されています。

    TBI (Traumatic Brain Injury)

    外傷性脳傷害。外部からの圧力によって脳に傷害を受け、全体的、もしくは、部分的な機能障害や心理社会的な障害、または、両方を起こし、子供の学習活動に影響するものです。頭外部の傷害の有無に関わらず、認識力、抽象思考、判断力、問題解決、感覚、知覚、運動能力、心理社会的行動、身体機能、情報処理、言語など、の1つ以上の分野に影響が見られる場合を指していますが、先天的・退行性のもの、出産時外傷からくる脳障害は含まれません。

    Therapeutic Day Program

    全日制療育プログラム。重度情緒障害を持つ子供達の特別支援学校環境で、学校のプログラムに情緒問題の治療も組み入れられています。学校の理論的方針にもよりますが、心理療法、行動管理、positive peer culture(ポジティブ環境)、その他の介入方法が実践されています。

    Thought Disorder

    思考障害。精神分裂症に見られるもので、妄想によって思考内容が混乱している状態だけではなく、思考形式にも混乱状態が見られます。たとえば、話題が関連性のないものに飛躍し続け、自分がそうしていることに気付いていないという場合です。話す内容も論理性に欠け、支離滅裂で他人が理解できなかったり、話す量自体には問題がなくても、あいまいだったり、抽象的過ぎたり、具体的過ぎたり、繰り返しが多いなど、相手に伝える情報量がほとんどないという場合もあります。

    Tourette’s Syndrome

    トレット症候群。無意識に起こる筋肉と発声の痙攣が同時に起こるもので、複雑なものになると音だけではなく、単語やフレーズなどが痙攣として現れるので、故意にしていると間違われやすいものです。6〜8歳ぐらいに初期の単純な痙攣が見られることが多く、次第にもっと複雑なパターンに変わっていき、思春期にはひどくなります。治癒不可能ですが、症状を短期間抑えたり、症状を和らげることはできます。知能発達には問題がありませんが、視覚運動能力と手先の運動のスキルなどに支障があることが多いようです。 2,000〜2,500人に1人の割合で、男の子に多いとされています。

    Transition Planning

    社会生活移行計画。学校卒業後の生活の計画を立てることで、14歳の半ばまでに始めなければなりません。Individual Transition Program(ITP)という書類作成の準備も含まれます。プログラムは子供が問題なく社会生活を迎えられるように、仕事経験や学校の選択など、個人のニーズやスキルを基に指導されます。

    Visual Impairment

    視覚障害。眼鏡など矯正器を使用しても、視覚を主要な学習手段として使えず、聴覚や触覚など他の感覚を頼りにしなければならないような状態で、完全な視覚力喪失と部分的な視覚力喪失の両方を含みます。

    Visual-Motor

    視覚と運動の統合(?)。目で見たものと筋肉の動きの統合。たとえば、飛んでくるボールを手で受け止めるという動作はVisual-Motorの統合が機能しているということです。

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    08/21 updated